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「湖畔荘(上・下)」 じらされてじらされた、その先には

2018年01月08日 | もう一冊読んでみた
 ■ 湖畔荘(上・下)/ケイト・モートン  2018.1.8

  2018年版 このミステリーがすごい!
  海外篇 第4位 湖畔荘(上・下)


湖畔荘(上・下)』 を読みました。

「訳者あとがき」には、この物語の内容が実にうまくまとめられています。

 ケイト・モートンは、長く埋もれていた家族の秘密を巧遅なプロットで読ませるゴシックロマンス風ミステリー作家として、世界中に熱狂的なファンをもつオーストラリアの若手実力派である。

上巻では、ひとつひとつの点として語られる物語が、下巻では、「その点と点がつながり」急展開を始めます。
それなりに面白い話ですが、結末は、ほぼ予想がつきます。

ぼくは、本書をミステリというより、「大人のおとぎ話」として読みました。

 「アンソニー、いいか、ぼくはすでに戦場で死んでしまったんだ。ぼくの魂は死に、この体もやがてそれに追いつくことになる」

 だがエリナにはわかっていた。自分は『エリナの魔法の扉』に出てくる、子供がほしいあまりに悪魔と取引をした王妃そのものだった。扉を開けて一線を踏み越え、許されぬ恋に落ちた。だからいまになって、その報いに苦しまなくてはならないのだ。この世は正義の天秤と因果応報が支配する場所。何事にも代償はつきものであり、いまさら扉を閉じても手遅れだった。

 「いかにも母らしいわ」
 「正義感が強いというか、"曲がったことはしない"というのが母のモットーだったから」


 レジ脇にテープで留めてあったのは、草木が生い茂る庭のゲートを写したセピア色の写真。右下隅には筆記体の白い文字で「魔法に彩られた思い出を」とある。これを受け取った人にそんな思い出をいっぱいつくってほしいという願いをこめたメッセージ。
「魔法って信じる?」少年が真剣なまなざしで訊いてきた。
「ええ」
「ぼくも」


この物語の中で、「母は、 曲がったことはしない」 と言われたのには首をかしげた。
何故、首をかしげたのか、その理由はここでは話せません。
その訳は、本書をお読み下さい。よくある話です。

ミステリですから興味深い話もいろいろ出てきます。

 ドナルドがいつも言っているように、動機にばかり気をとられていると大事なものを見落とすことになる。人は動機をすんなり説明できないと、目の前にある事実を見ようとしなくなるのだと。

 エダヴェイン事件がらみで彼が口にした、犯人の振舞いには二種類あるという持論を思い出した。皮膚が粟立った。たしかクライブはこんなことを言っていた----警察を疫病神のように避けたがるタイプと、何かにつけて警官に取り入り、何食わぬ顔で捜査に首を突っ込んでくるタイプ。

長いながい小説で、しかもじらされてじらされますが、上巻が終われば下巻はすんなりと読み進めることが出来るはず。 頑張って下さいね。

    湖畔荘 書評

  『 湖畔荘(上・下)/ケイト・モートン/青木純子訳/東京創元社 』

コメント
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