ゆめ未来     

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ヨイ豊/梶よう子

2022年10月17日 | もう一冊読んでみた
ヨイ豊 2022.10.17

梶よう子 『 ヨイ豊 』 を読みました。

題名の意味が、よく分かりませんでしたが終盤で納得。
江戸から、東京に時代が大きく変わる時、浮世絵師は、いかに生きたのか。
時代が様変わりするとは、どのようなことなのか。
現実感あふれるリアルな描写で、江戸の町でともに生きているように感じました。



 芝居は夢だ。日常を忘れる浮世の夢物語だ。

 錦絵は、紅絵といわれた昔から、浮き世を映す鏡だった。浮き世は憂き世。はかなく苦しい現の世なら、憂うよりも、浮かれ暮らすほうがいい。極彩色に彩られた浮き世の絵は、俗世に生きる者たちの欲求そのものだ。
 卑俗で、猥雑で、美しい。
 移り行く時を享受しつつ、刹那に浮き世を描くのが町絵師だ。
 未来永劫などには構っちゃいられない。そこにあるもの、己の眼に映るものを描き出す。


 人の寿命ばかりは致し方ない。逝く者に対して、残された者に課されるのは、その思いを継いでいくことだけだ。

 町絵師たちはともかく描きたいものを、面白おかしく、ときには頑なまでの意気地を見せる。他の生業とはそこが異なる。絵は暮らし向きにはまったく役に立たないが、眼にした者が、心を浮き立たせる。

 「人ってのは死ぬんだよなぁ」
 「わかってんだ、そいつはよ。けど、お江戸がよぉ、ちっとずつ消えていくような気がしてならねえのがさ、おれ、悲しいんだよ、寂しいっつーのかね。時代も死ぬんかなぁ」


 「もう江戸がみえねえ」
 風鈴の音、物売りの声、大川の流れ。
 風が、雨が、闇が、そのままそこにあった。らんぷの下には江戸はねえ。


 ------楽しいけど、苦しいよねぇ。
 描いて描いて、描き倒して------。
 飽きられて、捨てられて、また描く。
 人の心も時も移り気だ。
 だから、浮き世を彩り写す。
 憂き世は、浮き世だ。
 浮かれ暮らして、憂さ晴らし。


 「ヨイヨイ豊国。またはヨイ豊。そう呼ばれておりました」

 『 ヨイ豊/梶よう子/講談社 』


コメント
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