ゆめ未来     

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狩られる者たち 見えているものがそのまま真実だとはかぎらない

2021年10月05日 | もう一冊読んでみた
狩られる者たち/アルネ・ダール    2021.10.5

   「人生は歩きまわる影法師、哀れな役者だ
    舞台の上ではふんずり返って大見得を切るが
    出番が終わればふっと消えていなくなる
    人生は愚者の語る物語だ、騒々しく怒りに満ちていても
    なんの意味もない(シェイクスピア『マクベス』の中の有名な台詞)」


アルネ・ダール作、『 狩られる者たち 』 を読んだ。
時計仕掛けの歪んだ罠 』の後日譚である。

ぼくにとっては、難解なミステリで読むのに疲れた。
読んでも読んでもなかなか全体像がつかめない。
これまでのミステリとは読み方を変え、明かされるエピソードに集中しながら読み進める。認識の転換を図る。
本作品の厄介なところは、「 面白くなくはない 」と言う事に尽きるか。
いろいろあっても、手放せないのだ。



杉江松恋氏による巻末解説より「アルネ・ダールの現代性」を認識する。

 何も信じられない。誰も頼れない。
 靄に覆われ、視界が極めて悪くなった世界を現代人は生きている。一寸先は闇という言葉がこれほど当てはまる時代は過去になかったのではあるまいか。
 アルネ・ダールは、そうした相互不信の時代を描く作家である。


 すべての手がかりを与えて謎解きを行うという論理性と、主人公の行く先を読者に悟らせないという展開の意外性は現代ミステリーに求められる重要な二つの柱だ。

 主要登場人物さえ、物語の中でどのような役割を振られているのかわからないのが<ベリエル&ブローム>シリーズなのである。

物語では.........

 「いいえ」と彼女は答えた。「むしろわたしたちは理解することなんてできないという起点に立って、始めないといけないんじゃない? わたしたちが相手にしているのは、比類のない異常者よ。心の闇があまりに深すぎ、それに耐えきれずに、別人格にならざるをえないような。直近のふたつの残酷な殺人の合間には彼はあなたになった。もはやただの偶然ではかたづけられない。彼はあなたになった。

 ブロームの言葉。
 「わたしはただ見えているものがそのまま真実だとはかぎらない気がするだけよ」


迷走ばかりでは、物語は進まない。

 「サム、まえを向かないと」とブロームは言った。「後悔からは停滞しか生まれない。」


  『 狩られる者たち/アルネ・ダール/田口俊樹・矢島真理訳/小学館文庫 』


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2 コメント

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おはようございます (orai)
2021-10-05 09:25:10
狩られる者たちに
政治家の権力争いを
思い浮かべました。
返信する
Unknown (ゆめ未来)
2021-10-05 09:40:10
oraiさん、おはようございます。

 >政治家の権力争いを思い浮かべました。

「狩られる者たち」の難解さは、そうかあ~、最近、盛んに報道された政治家の権力争い級ですね。ぼくの頭では。

oraiさんの「西日」、面白かった。
素敵な写真を毎日続けるのも大変ですね。
返信する

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