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ニードレス通りの果ての家/カトリオナ・ウォード

2023年07月03日 | もう一冊読んでみた
ニードレス通りの果ての家 2023.7.3

カトリオナ・ウォードの『ニードレス通りの果ての家』を、読みました。
ぼくには、よく理解できない難しい小説でした。

    寂れた住宅が並ぶニードレス通り、
    その奥の暗い森に面した家に、
    テッド・バナーマンという男が
    娘のローレンや猫のオリヴィアと暮らしていた。
    家の周囲では不審な事態が起こり..........


「あとがき」と「解説」には、こうあります。

 ただ、本書でわたしはDIDを抱える人たちをふさわしく描こうとつとめた。.....解離性同一性障害は、小説においてホラー的な仕掛けとして使われることが多いかもしれないが、わたしのささやかな経験によれば、それとはかけ離れたものだ。障害を克服した人たち、障害とともに生きている人たちは、いつでもよいほうへ向かおうとつとめている。

 安らぎの場たるべき家が妄想と恐怖に支配されている光景は第三者にとっておぞましいものだが、住人にとってはそのような家での生活がもはや日常と化している場合もあるだろう。カトリオナ・ウォードの『ニードレス通りの果ての家』もまた、そんな閉ざされた家と、そこに住むひとの心の密室の物語だ。



 テッドの家には野菜スープとよどんだ古い空気のにおいがしみついている。もの悲しさににおいがあるなら、こんな感じにちがいない。

 母さんの話し方には子音を引っぱるようなかすかな癖があり、それがいつまでも消えなかった。海を思わせる響きだった。母さんは遠いところで生まれた。暗い星のもとで。

 神々のいるところは意外に近い。森のなかに住んでいる。爪で破れそうなほど薄い膜一枚の向こうに。

 あの子の姿が見えなくても待ちつづけるつもりだ。そう、それが愛だから。根気と忍耐。<主>にそう教わった。

 いやなことは寝てやりすごす。それがうまく生きるコツだ。

 「なんで?」かすれ声になった。こんな暗いところに置き去りになんてしたらどんなに寒くて寂しいだろう、雨で濡れて腐ってしまうだろうし、きれいな頭をリスに齧られてしまう。
 「これは訓練よ。いつかきっと母さんに感謝するはず。人生はすべてが別れの練習なの。賢明な人間だけがそれを知っているのよ」


 「人生は長いトンネルなの、オリヴィア。光があるのは出口だけ」

 だめだ、今回は本当に死ななければならない。つまり、忘れ去られなければならない。

  『 ニードレス通りの果ての家/カトリオナ・ウォード/中谷友紀子訳/早川書房 』



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