今週は、この4冊。
エンジェルメイカー/大いなる眠り/さらば愛しき女よ/長いお別れ
■エンジェルメイカー/ニック・ハーカウェイ 2016.8.20
ニック・ハーンウェイの『エンジェルメイカー』を読みました。
2段組p720の長篇です。
この小説は、筋を追って、まともに読んでいては、絶対、挫折する。
場面、場面のエピソードを楽しめば良い、ぐらいに割り切って読まないと。
<理解機関>とは、ある状況における真実を誤りなく知ることが出来るようにする装置だ。これがいかに魅力的かはわかるだろう。敵を絶対確実に騙せて、敵の嘘を絶対確実に見破ることができる。圧倒的な戦略的優位に立てるわけだ。
これなんてちんぷんかんぷんです。
イーディー・バニスタートとパスチョン("要塞"の意)のコンビが出てくるとゲラゲラ笑い転げてしまう。
イーディーは、凄腕の女スパイ、パスチョンは、イーディーの愛犬。
しなびたパグ犬で、身体が小さく、歯抜けであるばかりか、目玉は天然のものではなかった。両目ともガラスの義眼で、薄いピンク色をしているのは眼窩の色を映しているらしい。唸り声は威嚇がかなり本気であること示している。
わしは口をおぬしの陰部の近くに持っておるのだぞ。
わしを苛つかせたりコケにしたりするでないぞ!
わしは歯が一本しかない。
ああ、ほかの歯はずっと昔に悪人どもの肉に埋まりこんでしまったからな。
わしの顎を見よ。上顎も下顎も同じように正義のために歯を失ってしまった。
わしの女主人さまに失礼のないようにな。この方は老いぼれのわたしにも優しくしてくださるのだから。
『 エンジェルメイカー/ニック・ハーカウェイ/黒原敏行訳/ハヤカワ・ミステリ 』
■大いなる眠り/レイモンド・チャンドラー 2016.8.20
レイ・ブラッドベリの『死ぬときはひとりぼっち』を読んだら、チャンドラーやハメット、マクドナルドが読みたくなった。
記録をよると、2005年以降読んでない、とすると読んだのはそれ以前か。
チャンドラーの『大いなる眠り』を読む。
古い本なので、活字が小さくて少々読みにくい。
当時の文庫本の活字の細かさには、今更ながら驚く。
『 大いなる眠り/レイモンド・チャンドラー/双葉十三郎訳/創元推理文庫 』
■さらば愛しき女よ/レイモンド・チャンドラー 2018.8.20
差別用語、人種的偏見など時代を感じさせる表現も見られる。
当時の米国の社会状況も感じ取れる。
口のはしに黒い血を固まらせて、月のない空を見上げていた生命を失った二つの眼。壊れかけたベッドの柱を血に染めてむごたらしく殺されていた不潔な女。なにごとかを恐れながら、それがなんであるかがわからないので、どうすればいいか、判断がつかなかった美しい金髪の男。自由にしようと思えばわけはない美貌の夫人。それとはちがう意味でだが、こちらの出方次第ではやはり自由になる不思議な娘。ヘミングウェイのような、根性にはにくめないところのある不良警官。ワックス署長のような、警官というよりも商業会議所の参与を思わせる検察官。ランドールむのような、腕もあるし、職務にも忠実でありながら、その敏腕と誠実を公用に用いることのできない警官。すべてを諦めているナルティのような警官。インディアン。神経専門の医師。麻薬を売る医師。
The Big Sleep(1939) 『大いなる眠り』 東京創元社
FareWell,My Lovely(1940) 『さらば愛しき女よ』 早川書房
『 さらば愛しき女よ/レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』
■長いお別れ/レイモンド・チャンドラー 2016.8.20
引き続いて、『長いお別れ』を読む。
『大いなる眠り』『さらば愛しき女よ』と、連続して読むと、物語の雰囲気が少し変わった気がする。
『長いお別れ』は、今もよく読まれているのか、ぼくが読んだ本は、2010年75刷で活字は、文庫本でも読みやすい充分な大きさだ。
如何に生きるべきか。
働かないでよくて、金に糸目をつけないとなると、することはいくらでもある。ほんとうはちっとも楽しくないはずなんだが、金があるとそれに気がつかない。ほんとうの楽しみなんて知らないんだ。彼らが熱をあげてほしがるものといえば他人の女房ぐらいのものだ。
『長いお別れ』では、"ギムレット"がうまく使われている。
そして、チャンドラーのこだわりがある。
「ライムかレモンのジュースをジンとまぜて、砂糖とビターを入れれば、ギムレットができると思っている。ほんとのギムレットはジンとローズのライム・ジュースを半分ずつ、ほかには何も入れないんだ。マルティニなんかとてもかなわない」
ギムレットにはまだ早すぎるね
飲めば、"酒と女と人生"の話しに行き着くんだね。
「アルコールは恋愛のようなもんだね」と彼はいった。「最初のキスには魔力がある。二度目はずっとしたくなる。三度目はもう感激がない。それからは女の服を脱がせるだけだ」
酒を飲む人間はいつかはだらしのない女と問題を起こすものです。
さようならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。
今回読んで感じたのですが、登場人物は、初期の作品よりみなさんそろいもそろって、なかなか饒舌になっている。
The Long Good-bye(1953) 『長いお別れ』 早川書房
『 長いお別れ/レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』
エンジェルメイカー/大いなる眠り/さらば愛しき女よ/長いお別れ
■エンジェルメイカー/ニック・ハーカウェイ 2016.8.20
ニック・ハーンウェイの『エンジェルメイカー』を読みました。
2段組p720の長篇です。
この小説は、筋を追って、まともに読んでいては、絶対、挫折する。
場面、場面のエピソードを楽しめば良い、ぐらいに割り切って読まないと。
<理解機関>とは、ある状況における真実を誤りなく知ることが出来るようにする装置だ。これがいかに魅力的かはわかるだろう。敵を絶対確実に騙せて、敵の嘘を絶対確実に見破ることができる。圧倒的な戦略的優位に立てるわけだ。
これなんてちんぷんかんぷんです。
イーディー・バニスタートとパスチョン("要塞"の意)のコンビが出てくるとゲラゲラ笑い転げてしまう。
イーディーは、凄腕の女スパイ、パスチョンは、イーディーの愛犬。
しなびたパグ犬で、身体が小さく、歯抜けであるばかりか、目玉は天然のものではなかった。両目ともガラスの義眼で、薄いピンク色をしているのは眼窩の色を映しているらしい。唸り声は威嚇がかなり本気であること示している。
わしは口をおぬしの陰部の近くに持っておるのだぞ。
わしを苛つかせたりコケにしたりするでないぞ!
わしは歯が一本しかない。
ああ、ほかの歯はずっと昔に悪人どもの肉に埋まりこんでしまったからな。
わしの顎を見よ。上顎も下顎も同じように正義のために歯を失ってしまった。
わしの女主人さまに失礼のないようにな。この方は老いぼれのわたしにも優しくしてくださるのだから。
『 エンジェルメイカー/ニック・ハーカウェイ/黒原敏行訳/ハヤカワ・ミステリ 』
■大いなる眠り/レイモンド・チャンドラー 2016.8.20
レイ・ブラッドベリの『死ぬときはひとりぼっち』を読んだら、チャンドラーやハメット、マクドナルドが読みたくなった。
記録をよると、2005年以降読んでない、とすると読んだのはそれ以前か。
チャンドラーの『大いなる眠り』を読む。
古い本なので、活字が小さくて少々読みにくい。
当時の文庫本の活字の細かさには、今更ながら驚く。
『 大いなる眠り/レイモンド・チャンドラー/双葉十三郎訳/創元推理文庫 』
■さらば愛しき女よ/レイモンド・チャンドラー 2018.8.20
差別用語、人種的偏見など時代を感じさせる表現も見られる。
当時の米国の社会状況も感じ取れる。
口のはしに黒い血を固まらせて、月のない空を見上げていた生命を失った二つの眼。壊れかけたベッドの柱を血に染めてむごたらしく殺されていた不潔な女。なにごとかを恐れながら、それがなんであるかがわからないので、どうすればいいか、判断がつかなかった美しい金髪の男。自由にしようと思えばわけはない美貌の夫人。それとはちがう意味でだが、こちらの出方次第ではやはり自由になる不思議な娘。ヘミングウェイのような、根性にはにくめないところのある不良警官。ワックス署長のような、警官というよりも商業会議所の参与を思わせる検察官。ランドールむのような、腕もあるし、職務にも忠実でありながら、その敏腕と誠実を公用に用いることのできない警官。すべてを諦めているナルティのような警官。インディアン。神経専門の医師。麻薬を売る医師。
The Big Sleep(1939) 『大いなる眠り』 東京創元社
FareWell,My Lovely(1940) 『さらば愛しき女よ』 早川書房
『 さらば愛しき女よ/レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』
■長いお別れ/レイモンド・チャンドラー 2016.8.20
引き続いて、『長いお別れ』を読む。
『大いなる眠り』『さらば愛しき女よ』と、連続して読むと、物語の雰囲気が少し変わった気がする。
『長いお別れ』は、今もよく読まれているのか、ぼくが読んだ本は、2010年75刷で活字は、文庫本でも読みやすい充分な大きさだ。
如何に生きるべきか。
働かないでよくて、金に糸目をつけないとなると、することはいくらでもある。ほんとうはちっとも楽しくないはずなんだが、金があるとそれに気がつかない。ほんとうの楽しみなんて知らないんだ。彼らが熱をあげてほしがるものといえば他人の女房ぐらいのものだ。
『長いお別れ』では、"ギムレット"がうまく使われている。
そして、チャンドラーのこだわりがある。
「ライムかレモンのジュースをジンとまぜて、砂糖とビターを入れれば、ギムレットができると思っている。ほんとのギムレットはジンとローズのライム・ジュースを半分ずつ、ほかには何も入れないんだ。マルティニなんかとてもかなわない」
ギムレットにはまだ早すぎるね
飲めば、"酒と女と人生"の話しに行き着くんだね。
「アルコールは恋愛のようなもんだね」と彼はいった。「最初のキスには魔力がある。二度目はずっとしたくなる。三度目はもう感激がない。それからは女の服を脱がせるだけだ」
酒を飲む人間はいつかはだらしのない女と問題を起こすものです。
さようならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。
今回読んで感じたのですが、登場人物は、初期の作品よりみなさんそろいもそろって、なかなか饒舌になっている。
The Long Good-bye(1953) 『長いお別れ』 早川書房
『 長いお別れ/レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』
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