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水脈/伊岡瞬

2024年06月03日 | もう一冊読んでみた
水脈 2024.6.3

伊岡瞬さんの『水脈』を読みました。

 やや水量が増しているとはいえ、穏やかな流れの川面を眺める。
 ここを男女の死体が、まるで流木のように流れてきたのだろうか。
 だれも知らない暗黒の地下空間に大量の死体の山があり、すぐそばを流れる冷たい地下水脈に一つまた一つとこぼれ落ち、
 はるかに流れ下ってぽっかりと明るい地上の川に浮く。
 そんな光景を想像してしまった。


前半部分は、大した動きもなくぼくには退屈。
後半は、面白い展開でした。

ふたりの刑事、真壁と宮下コンビが味わい深い。

 会うのは----口をきいてくれるかどうかはまた別の問題だが----奥多摩分署の事件のとき以来となる。そして、あのときの一件が片付いたら辞める決意でいた真壁を、もっとも強く引き留めたのは、ほかでもない蔦警部だった。
 「あんなはみ出し者は辞めさせろ」の声が吹き荒れる中、「獲物を姪えてくる犬に、行儀は二の次だ」と言い放って矢面に立った。
 恩人でもあり、煙たいどころではない存在でもある。天敵ともいえた久須部警部が去った今、警察において真壁が唯一心底苦手にしている相手だ。


物語の中に、真壁と宮下が取り組んだ過去の事件のことが、たびたび触れられている。
そのあたりの経緯が知りたいので、今度『』を読んでみるつもりです。

 使い道に困るほど俄にあぶく銭を得るものと、幼い子供に菓子パンー個をあずけ身を粉にしてパートをかけ持ちする単身の親たち。
 不公平感や鬱屈した不満は、やがてはっきりとした理由を持たない怒りを生むことになる。
 とにかく腹が立つ、世の中のすべてが気に入らない、そんな、おそらくは自身にもうまく表現できない不満が、世の中に、いや世界中に満ちている。いくつもの国で中道の政権が倒れ、左にしろ右にしろ過激な主張が支持される時代になった。
 ある者は自暴自棄になり、夢を拾て、我が身を滅ぼす道を選ぶ。
 そしてある者は、その怒りを外へと向ける。

 その不満や鬱屈は、最初は森の中でひっそりと湧き出た泉かもしれない。山肌を滴り落ちる雫かもしれない。もしかすると、そのまま蒸発するか大地に浸み込んで消えてゆくものもあるだろう。しかし、いくつかは消えずに細いひと筋の流れとなる。


    『 水脈/伊岡瞬/徳間書店 』


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