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「書架の探偵」 複合体の話なのです

2017年12月18日 | もう一冊読んでみた
書架の探偵/ジーン・ウルフ  2017.12.18

 E・A・スミスという名前のイニシャルに....E(エドガー)・A(アラン)・ポーというもう一つの名前のエコーを聞き取ってもおかしくはなく、実際に、作家本人のE・A・スミスのかつての妻であり詩人であったアラベラ・リーは、ポーの有名な詩「アナベル・リー」に目配せした名前である。....
 ポーはともかくとして、本書はそのようないにしえの作家たちの記憶を忘却の淵からふたたび呼び覚ましてくれる。その意味で、『書架の探偵』はそのものじたいが忘れられつつある作家たちの記憶を保持した、いわば「複合体」なのだ。 (訳者あとがきより)


単なるSFであったなら、ぼくは 『書架の探偵』 を読まなかっただろう。
本をからめたSF・ミステリだったので読む気になりました。
さて、本書は、図書館の「蔵書」ならぬ「蔵者」、「蔵者は書架の棚で眠り、排泄し、洗顔する。」「複生体」の人間なのだが、このE・A(アーン)・スミスが図書館から借り出され、探偵として活躍する物語です。

ええ! 何言ってるか分からないって、そうでしょう、何と言ってもSFですからねえ。

「訳者あとがき」より

 『書架の探偵』は、いかにもジーン・ウルフらしい小説である。
 それは何よりもまず、「本についての小説」だからだ。
 鋭利なSF批評家であり、ジーン・ウルフの最も良き理解者であるジョン・クルートとのトークで作者自身が語るところによれば、本書の最初の発想「人間をできるかぎり本に近づけたらどうなるか」ということだったそうだ。それから、亡くなった作家の記憶を身体に植え付けた、本書の言葉を借りれば「複生体(リクローン)」としての人間=本というアイデアが生まれた。


少しは、お分かりになりましたか?
だめ。 なら本書をお読み下さいませ。

  書架の探偵 BOOK asahi.com

ひとつふたつ、気に入った言葉を抜き出してみました。

 わたしたち女は、うそばかりついているの。なぜなら、うそが得意だから。男が総じてほんとうのことをいうのは、うそが得意でないからなのよ

 「お金を握らされたかもしれないでしょ」
 「おっしゃるとおり、たしかに金というものは、いつの世にも効果絶大です----ただし、それが充分な額であるのなら、ですよ。」


 神は三つのダイスを振る。そのうちふたつは運命と運のダイスだ。

確か、アインシュタインは、「神はダイスを振らない」と言わなかったか。

物語の途中から、ジョルジュ・フェーヴルとマハーラ・レヴィが、スミスの手助けをするのですが、この二人の登場がなければ、この物語は精彩を欠いたことだろうと、ぼくは、感じる。
過去を持つこのふたりが、素適な雰囲気を醸し出すのです。

  『 書架の探偵/ジーン・ウルフ/酒井昭伸訳/新ハヤカワ・SF・シリーズ 』


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