ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
好きなことを、心から楽しもうよ。
しなやかに、のびやかに毎日を過ごそう。

熊と踊れ(上・下) アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ

2017年01月21日 | もう一冊読んでみた
熊と踊れ(上・下)   2017.1.21

 マーブルケーキ。マフィン。凶悪犯とされて長期刑に服している服役囚が、面会のたびに菓子を焼く。ブロンクスはかすかに頬を緩ませた。警備の厳しい刑務所の面会室 ---- 一発抜くためのベットのそば、ぐらぐ揺れるテーブルの上に、甘い菓子が載る。

どうもこの部分は、日本の刑務所では考えられないことが書かれているようだ。
スエーデンの刑務所は、このようになっているの! と驚かされる。

ひげ面で筋骨隆々の凶悪犯が、自らの面会人のために、甘いケーキを焼いて待っている。
そして、そのケーキのそばには、「一発抜くための」なにまで用意されているというのだから。
人間に対する考え方が根本的に違うのかも知れない。

それでも、やはりムショ暮らしは、苛酷だ。

 服役のための手続きを終えたサムが、まずハル刑務所へ収容され、やがてティーダホルム刑務所に移送されたころのこと。時間をベースにしてものを考えられないということはつまり、希望がないということ、前向きになれないということなのだと、あのころのヨンにはまだわかっていなかった。

レオ、フェリックス、ヴィンセント3兄弟とヤスペルは鉄壁な規律と集団行動のもと、銀行強盗を繰り返していく。

 人はみな、だれかの真似をし、その特徴を受け継いだり借りたりして育つ。

 境界線を越えてしまうこと。これまでの人生を捨てる決心。これまでと同じ人生はもう生きられないのだ、と悟ること。

上巻の終わりでは、この鉄壁な規律にもなにやらほころびが見え始める。

さて、『熊と踊れ』とは、どんなことなのか。

 「できそうか? できるよな、親父。踊って、殴る。熊のまわりで踊る。敵のほうが大きくても、勝てる。叩きのめせる。ちゃんとステップを踏んで、絶妙なパンチを繰り出せば。そうだろう?」

 「あいつらのまわりで踊ってやれば、勝てる。あいつらが、自分は優勢だと思い込んでいるあいだに、こっちが攻撃してやれば」


このミステリー、親と子の関係や兄弟同志の関係、元妻とのことなど考えさせられる内容が一杯つまっていた。

 「兄さん……突き進むんだ……まっすぐ突き進もう」

 「もし、まずいことになったら……そうなったら、自分の身は自分で守るしかない。わかるか? おまえはおまえのやり方で終わらせろ。おまえなりのやり方でいいんだ。なにをしようと、ヴィンセント、間違いということはない。いいな? どんなことになろうと……おまえがどんな道を選ぼうと、それは正しいんだ」


 「わたしたちはまだ、ちゃんと終わってなかった。
 ちゃんと終わりが来るまで踏みとどまっていたら……
 いつかはあきらめることもできたでしょうに!

 「終わらせることよ、ヨン。 …… 」


 『熊と踊れ』は、『2017年版 このミステリがすごい!』 海外編/第1位 に輝きました。

 『 熊と踊れ(上・下)/アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ
              /ヘレンハルメ美穂 羽根由訳/ハヤカワ・ミステリ文庫
 』


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« きし野さんのお弁当! | トップ | 今週、日経平均株価は25日移... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

もう一冊読んでみた」カテゴリの最新記事