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黒き荒野の果て/S・A・コスビー

2023年03月14日 | もう一冊読んでみた
黒き荒野の果て 2023.3.14

このミステリーがすごい! 2023年版
海外編6位 黒き荒野の果て/S・A・コスビー/ハーパーBOOKS


黒き荒野の果て 』の話の筋は、シンプルで目新しいものではない。
しかし、読ませる。おもしろいに尽きる。
ひとつひとつのトラブルの結果もすぐ出る。
久しぶりに飽きずに堪能しました。



 「おまえの親父みたいな男は、おれとか、昔のおまえもそうだが、病院のベッドでは死ねないものさ。アントは完璧じゃなかった。車を愛し、酒を愛し、女を愛した。その順番でな。時速百六十キロで生き急いでた。ああいう男は、まあ、こうと決めたら最後、たいていバタンとドアを閉めていなくなる。だがいいか、あいつがあっちに行ったんだとしたら、もちろんほかにも数人連れていったにちがいない。おまえは親父にそっくりで、見た目は生き写しだが、中身はちがう。あの親父は家庭に落ち着くタイプじゃないってことさ。そのせいで、あいつもおまえの母親も苫労した。エラは最近どうしてる?」

 いいな、今後どんなにひどい状況になった気がしても、こういうことは二度としないと約束しろ。今回みたいに突っ走ると、あっという間に戻る道がわからなくなるぞ。自分自身を見失う。ある日、目が覚めると、ひどいことをしても何も感じない人間になっている。そんな人間になったら最悪だ。それを許すわけにはいかない。おれはおまえの父親で、おまえを守る義務がある。

 「そこの抽斗から煙草を取って」母親が言った。
 「母さん、煙草なんてやめろよ。いま死にそうって言わなかったか?」
 「ああ、だから煙草一本くらい、なんの害にもならないよ」エラは言った。
 「酸素吸入器をつけたまま煙草を吸ってるのか? 施設が吹き飛ぶぞ。だろ?」


 こうしたことすべてを、ずっと長いこと言ってやりたかったが、ボーレガードはそうしなかった。言いわけはケツの穴に似ている。誰にでもあるが、みなクソがついている。

 裏の生活につきもののリスクだった。どんなに頭がよくても、どんなにしっかり計画を立てても、行きつけのバーにどこかの田舎者が現れて、尻にダブル・タップを食らわそうとする可能性はつねにある。それは、仕事をひとつやるたびに、みずから頭の上に吊るすダモクレスの剣だった。

 神は、誰であれ自分に逆らう者を助ける。

  『 黒き荒野の果て/S・A・コスビー/ハーパーBOOKS 』




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