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特捜部Q カールの罪状/ユッシ・エーズラ・オールスン

2023年08月07日 | もう一冊読んでみた
特捜部Q カールの罪状 2023.8.7

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q カールの罪状』を、読みました。
大変おもしろいミステリでした。
上下2段組p537と長編でしたが、長さを感じさせない読みやすさでした。



 表紙と数枚の写真と、文字が並ぶ書類は二ページだけというもので、ファイルの山に埋もれてあっさり見落としかねないものだった。そこで扱われている件は“自殺”と結論づけられていた。だが、報告書の最後に“控えめに意義を申し立てたが、棚上げされた”とのハーディ・ヘニングスンのコメントがあった。ハーディは違和感を覚えると必ず、そういうコメントを残すようにしているようだ。

 人間、気が進まないことをやらされるときは顔に皺が寄るものだ。カールの顔には、LSDでリップした建築家がでたらめめに描きなぐったような線が縦横無尽に走っていた。

 モットー:「この行ないを“私的制裁”と呼ぶ人もいるだろう。でも、これは救済だ。わたしたちの行ないによって、世界はほんの少しよくなるのだから」

 髪の色も服装もメイクも違っていたが、自分の誘拐した女だとすぐにわかった。目を見ればわかる。リアリティ番組を制作するときには必ず、参加者の目に寄るようカメラマンに指示してきた。目は何もかもを映し出すからだ。恋心も、失望も、不安も。目は人間の内面の映し出す鏡のようなものだ。だが、この女の目からそうした感情はいっさい感じられなかった。ただ、冷たく、空虚なだけだ。慈悲の心などまるで持ち合わせていないらしい。

  『 特捜部Q カールの罪状/ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田奈保子訳/ハヤカワ・ミステリ 』



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