Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

港南中学校総合学習「運河学習」がスタートとしました

2012-05-18 | 港南芝浦地区まちづくり
港区港南中学校での総合学習「運河学習」が始まりました。
24名の2年生のかわいい生徒さんたちです。
我が研究室からは7名がファシリテーター役で参加しました。

授業するのは大学院2年生の大学院生です。他の学生は探究活動の際に各班ごとにつき生徒さんたちの疑問を引き出し,科学的な考え方を引き出すようにしています。
大学生はここで教えてはいけません。生徒たちの疑問を引き出します。


本学OBの理科の先生のご指導のもと事前に入念な打ち合わせをしながら授業の準備を行っています。
今回は初回と言うことで,実際に近くの「港南地区高浜運河」に出て採水をしました。

高浜運河は,越中島から横須賀までの東京湾西岸を私が観察した中で,最も水質条件の良くない場所です。

ここには下水処理場があり,東京23区の汚水90万立米(お隣のソニービルが70万立米だそうです)を浄化していますが,昭和6年にできた汚水処理場,さすがに限界です。立派なマンションは建っても下水処理場の能力は高まっていないのです。

海洋大学がそばにあり住民のみなさんの憩いの場所である高浜運河は早急に改善すべきところです。「昔に比べればきれいになったよ」と多くの年配の方にはおっしゃいます。人間は環境によく慣れるものです。しかし,硫化水素のきつい臭いはなんとかしなくては。大人の責務として。

中学生たちはその現状を認識して改善につなげるべく,定期的にサンプリングを行います。
さて,どのような学びが展開するのでしょうか。生徒さんたちの成長ぶりが楽しみですね。

【日本・ノルウェー マリンセミナー 2012】 海洋資源利用に係る課題と機会

2012-05-11 | 水圏環境教育
【日本・ノルウェー マリンセミナー 2012】 海洋資源利用に係る課題と機会 --- 2つの海洋大国の協力の可能性が東京港区台場の日本科学未来館で開催された。このセミナーは持続可能な海洋資源の利用に関し、学術と産業の連携強化を目指し,ノルウエーならびに日本の政府ならびに研究者による講演会である。

午前中の全体会議では,ノルウエーからはトロンド・ギスケ貿易産業大臣,,クリスティン・グラスタッド水産沿岸域副大臣,日本からは政府関係者,業界団体からそれぞれの水産の事情が話された。

印象的なのは,ギスケ大臣は30代後半,グラスタッド副大臣は20代後半と大変若い大臣であり,水産の専門ではないにもかかわらず,明確なビジョンを持ってノルウエーの水産政策を語ってくれたことである。漁業制度の改革も例えば資源維持のために17000隻を6000隻に減船し,なおかつ厳選した船が国外に譲渡され密漁に繋がらないように厳正な処置をしていること。また,このような対策が可能になるものは,シーフード産業の世界のリーディングカントリーを目指し,孫の世代を考慮する責任があるからであり,そしてそのことがシーフードの価値を高めるのであると明確に語った。ノルウエーでは,漁業者への補助金というものはない。漁業者が自立できるようにチームノルウエーとして漁業を支援しているのである。

また,グラスタッド大臣はこれからの社会はナレッジベースの時代になっている。とも語った。いわゆるドラッカーのいう知識基盤社会である。ここで,注意したいのは知識とは単なる情報のことではないことである。ナレッジはknowledgeであり,一般的に知識と訳されているが,このナレッジベースという意味からすれば,知識を活用する「智慧」という意味あいが強い。様々な知識を活用できる能力を身につけていることである。教養教育が見直され改めて書く大学が取り組み始めているが,単なる知識の詰め込み,情報の発信ではいけないのである。さらに,水産に関する研究の推進は,海洋生物の価値を高めることであり,そして智慧を高めることにつながるわけであり,研究は大変重要なのであるとも語っている。大臣がここまで研究を推進するだけしっかりした国家戦略を持っているものと思われる。

一方日本の講演は,「水産物の需要が低迷している。また,自給率が下がっている。需要を回復させたい。ノルウエーの消費プログラムを参考にして,魚食推進を図りたい。・・・・・」これは,今に始まったことではない。何十年前からの重要な課題を我が国は未だに引きずっているのである。

水産は明治時代に松原新之助が「漁業・製造・養殖の3分野である」と明確に定義して,日本で始まった学問・産業分野である。

「水産業はまた科学の一部なり」(内村鑑三),「地方水産業の発展のため」(松原新之助)と高い理想を目指して設立された関係協会,大学,学会,協同組合,中央政府,自治体はもう一度原点に立ち返るべきである。



5月6日閉伊川で捕獲された遡上サクラマス

2012-05-08 | 閉伊川調査
閉伊川では,岩手県内では唯一,河川漁業協同組合が自ら運営するヤマメ養殖場において地元小学生ととともに採苗を行い,春にヤマメを地元小学生とともに放流を行なっている。長年の漁業協同組合の努力により,毎年500本以上が捕獲されているという(文献:水口憲哉著「桜鱒の棲む川」)。三陸沿岸河川の中で最も多いようだ。

この日(5月6日),私は閉伊川で釣りをした。幸運にも,サクラマスに出会うことができた。あまり大きな個体ではないが,釣り人にとっては春を告げる待望の魚である。

サクラマスは,河川上流域で生まれ,1.5年ほど河川で生活したあと,春に海へ出,1年後の春に50cmの大きさになって再び産卵場へ戻ってくると言われる。遡上は春であるが,産卵は秋である。春から秋まではこの大きな体で半年間も河川で生活する。半年間の間に,卵を大きくして産卵に備えなくてはいけない。しかし,河川は海洋ほど餌は豊富ではない。そのため,春先に遡上するサクラマスは,よく肥えている。

写真のサクラマスは,おそらく長年の種苗生産努力によって,また好適な産卵環境によって,あるいは釣り人や住民の河川環境維持の取り組みによって,また恵まれた海洋環境によって,育まれた生命(いのち)である。

何とも愛(いと)おしい魚ではないか。閉伊川の恵みに感謝である。