生物の再生を創る情報としてDNA(デオキシリボ核酸という塩基物質が生物の細胞には必ず存在している)は、4つの塩基が水素結合で結ばれ、アクチン・ミオシンシ・トシン・チミンという各塩基の対に成って、AとC、MとTは、互いに対になり、らせん状の構造を創り出している。遺伝子浮動とはその塩基分子が、熱の為に常に分子が熱振動をしてゐて、塩基の対に変化を起こす事を言う。遺伝情報の変異は生物の形質に変化をもたらす物だが、この遺伝子浮動は生物の形態変化とその原因である分子進化の主要な要因の一つと考えられている。 進化論と絡んで動植物の遺伝子、その分子遺伝学上の生物の形態情報を記録するデオキシリボ核酸の塩基の位置変化は、常時起きている事が発見されたのは、今から大分昔のことである。当時、高3の頃に家で購読していた科学朝日という雑誌がある。確かこの8月号には、1968年頃に東京で開催された、世界生物学会議だか遺伝学会議だかで、木村資生 岡崎遺伝学研究所教授の説が解説されていた。後に木村先生は、英文で「分子進化の中立説」という本を書かれており、その主張は遺伝子を構成する化学分子が定期的に変化して、それが生物の環境の変化に対する適応を創り出している。という主張だった気がする。DNAの永い鎖の塩基の位置変化である分子遺伝学的進化論であった。
当時の私はメンデルの法則くらいは頭に在ったが、分子遺伝学の詳細な論拠は知る由もなかった。で、中立説だって?、遺伝子の中立って何だ?構造の何が中立なんだ?、くらいの認識しかなかったのは仕方のない事です。1968年の夏ことであり今から55年も前のことですから。当時は進化論全盛の時代です。より強い高等な物がそれ以外の生物を駆逐するという狂暴な誤解がまかり通る時代でした。それは生物の歴史から否定されたのも係わらず、そう言った錯誤は今現在にも残っております。それが現実世界を左右しているという間違った認識です。
初期の進化論の歴史はとても面白いものが在ります。それはCharles・Darwinという人間の面白い知的成長過程から辿ることです。成長期に問題を抱えていたこの人は、その著書にもある通り当時有名だったライエルの地質学を勉強し、地層や化石という物に興味を示しました。Darwinはビーグル号航海記で有名です。その後の進化論に関しても問題を生み、その後の進化論論争のタネを作っている。DNA分子は熱の為に常に揺らいでいる。それは、生物の変化と常に関係してゐて適応と進化の差異は、現在でも多く議論される問題です。現在では「分子進化学」という分野が出来て居り、或る一定期間の間に、塩基の変異が一定量存在するという、時間的な分子進化の問題です。DNAの分子ラセンは固定したものでは無く、常に熱力学的に揺らいでいる。これはおそらく熱的な揺らぎであり、謂わばらせん自体が熱による振動をしているイメージです。熱的な振動であれば分子進化も単位時間内に一定量の変異が起きるのは誰でも推測できる。この熱的遺伝構造の分子置換がでは進化にどれだけ影響を及ぼしているか、それが問題です。
分子進化学は、その辺の現象を理論的に解明したいという動機で、起こった学問分野です。それは生物の個体変化を解くカギになる。