我々が中学で習った三角関数、元は三平方の定理的幾何学から発展・展開し、手足を伸ばしては平面円座標を土俵に一周360度という角度と関連付けてsin、cos、tan、を関数として作りだした。これは中学で習う教程だ、三角関数は逆三角関数共々やたらに公式が多く、こんな物を一々覚える必要などない、sin2乗Θ+cos2乗Θ=1から公式は殆ど導き出せるので、その根幹を理解してゐれば好い。高校では三角関数の微積分を習う。そこでも公式は意外に多い。微積分の公式自体が指数・対数とも絡み合って、豊富な世界を創り出している。変な曲芸的な演習問題は多いが大抵は解ける。更に三角関数は驚くべき応用域をもってゐる、熱伝導を数学的に考える為にジョセフ・フーリェは三角関数を使いフーリエ変換を考え出し、それでフーリェ解析の分野を創った。これは工学的な応用で熱に及ばず、電子・電気工学の重要な道具である。更には情報理論にまでその糸は伸びている。
ところでだいぶ昔に成るが有名な数学者で黒川信重さんが書いた現代三角関数論という本に出合った。三角関数を発展させた多重三角関数という手法を使い、驚くべき事には、これとΓ関数、ζ関数をむすびつける糸を探すという。奥が深い試みだ、数学の発展と言うのは一朝一夕には進まないが、どんなところにどんな金剛石が埋まって居るのか分からないから面白い。ζ関数が出て来た以上、素数分布の公式にも近づいたか?な。三角関数も遠い古代から問われて来た物だし、素数の分布も同じく遠い古代からの問題だ。素数の問題は原子構造などの物理学の自然現象とも関連付けられ、やはり自然は数学的な関連の原理で成り立っているのだなと直感した。自然に留まらず生物の構成力というかモノを作る指導原理は、何かの今は認識されていない所の、大切な概念に因っている。あらゆる物には、なにか対称性の構成原理が働いているらしい。
話は変わるが、我々の周りでも生物的にほんとうに不思議な現象は多くある。共通性と言うことで言えば、紅葉のタネについた羽根は、ハエの羽根とそっくりである。なぜ効までにソックリなのか?、誰も不思議に思わないのか?、モミジの種子に付いた羽根は葉の変化した物だろうが、付いてゐるのは1枚である。ハエの羽根は2枚だが、どうみても同じ形をしている。恐らく、それをつくる上での、何らかの共通性の構成上の指導原理が在るのだろう。人間は未だその指導原理を知らない。羽根の構造まで同じである。複葉機の羽根は、それを模倣している様だ。自然が創り出す羽根は、それは構造力学的な強さと飛翔の為の効率のいい形をしている、これを詳細に観察していると、我々の現代の飛行機を想い出す。空気という水の中を飛翔するにはどうすれば好いのかを考えて創っているみたいな、何かすべてを予定調和のような意図が感じられる。それはなにか空恐ろしい感じがする。大自然は、凡そ人智などモノともしない、深く偉大な物です。
さて、三平方の定理の起源はギリシャ時代よりも遥かに古く、ヒトがものを考えるように成って直ぐの出来事だろう。過去の偉大な知識の多くは、絶え間ない戦乱によって消滅した例に暇がない。各地方から集まった古代の知識は、ギリシャで編集されてそれが本となり保存されその百分の一くらいが現在まで伝わった居る。それはプトレマイオス朝のアレキサンドリアに在った大図書館が猶太人によって放火され、多くは灰燼に帰した為である。貴重な収集された資料は、その様にして失われた。三角関数がこの様に応用範囲が広く成った理由は、土俵が拡張された為である。単なる三平方の定理の範囲では、これ程の広範な拡張は望めなかったでしょう。三平方の定理を円座標を使い角度θという概念を導入し拡張したことで、正弦・余弦、を導入した。角度θのこれだけの概念の導入で三角関数は多大な応用範囲を拡張した。土俵を拡張することで数学と言う学問は昇華し変身する。