室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

波乱の新宿ジャズ・フェスティバル

2010-05-16 15:01:59 | Weblog
昨日は、《新宿・春の楽しいジャズ祭り》に一日で、新宿文化センター全館でお昼から夜8時半まで、にぎやかにジャズが流れました。               

私は、その中の片隅で、唯一毛色のちがったタンゴをやらせて頂く《アストロノーツ》と、ジャズ・ファスティバル全般の責任者の永谷”大将”もメンバーのお一人である《田部雅美フレンズ》の2つに出演させて頂いております。

バンドネオンの池田くん、ベースの大熊くんに、今回はヤンネ舘野さんが参加できるという事で、カルテット・バージョンが実現しました。実現したのですが・・


11時半には銅鑼をお借りしてメンバー全員でリハーサルを開始。1時間少々の練習の後、田部フレンズで初めてご一緒するバイオリンの大西さんと田部さんと3人での打ち合わせをしている間に、池田くんと大熊くんは先に新宿文化センターに向かったもようでした。ヤンネが片付けやシャッターを元通りに下ろすなどの手伝いもしてくれて、出遅れた私たちはタクシーで向かいました。

ホール内の受付で登録をすると、先に出たはずの二人がまだ登録を終えていない事がわかり、「どこかで何か食べてるのかな?」と思いつつ、大ホールの楽屋へ降りていきました。そこでベーシストの木村パンダさんにバッタリ会って挨拶をすると、「池田くんたち、来てる? さっきケンカに巻き込まれて、警察を呼んでたんだけど・・」

パンダさんは、池田くんのことを何でご存じなのかな・・なんてボ~ッと話を聞いていたら『ケイサツ? 何っそれ

 
池田くんは、およそ立ち回りをするようなタイプではなく、何がなんだか、よっぽどの事?

事の次第は、二人が楽器をかついでホール近くのコンビニに付近まで来た時に、何やら酔っぱらいのチンピラが誰かに絡んでいて、それから二人の方にやって来て「なんだコレは?」と聞くので、大熊くんが「ベースです」と答えたのだそうです。

大熊くんをかばおうとして池田くんが入り、回し蹴りをされて(バンダ証言による)池田くんが相手の顔を殴ったら鼻血がでた・・

池田くんは頭を殴られ、アゴも殴られたそうで、パンダさんは「警察を呼んだ方がいいよ」と言いつつ、あと少しで着くホールに向かったそうです。そしてやがてパトカーが来て、バンドネオン、ベースに4人の男が乗り込んで、チンピラはもう1台のパトカーで警察署へ連れて行かれたのです。


ホールの地下では携帯もつながり難いので、外に出て池田くんの携帯にかけたところ「今、パトカーに乗せられて警察に向かっています」と小さい声で言っています。「2時15分から本番なんで、それまでに帰らせてくださいって言ってよ!」「言ったんですけど・・。すみません。間に合わないかもしれません。申し訳ないです」


とりあえず怪我はしていないそうで、楽器も無事。ただ本人たちが和解書を書かされていて、その作業が終わらないと帰らせてもらえない・・。

ガ~ン! せっかくみんなでリハーサルして来たばかりなのに! 時計を見るとスタートまであと25分。

しかし、急にお腹が空いてきて、先ずはお弁当を食べる決心をしました。楽屋に戻り、ヤンネに《現実》を話して、「穴をあける訳にいかないから、二人で出来ることをやりましょう!」お稲荷さんをほおばりながら、手持ちの譜面の中で、二人だけで出来るレパートリーが無いか、調べました。

本来11曲用意していた譜面の中で、7曲できそうな見込みがついたので、ホッとしました。しかし気がつくと本番5分前。地下の楽屋は複雑な行き方をしなければいけない場所で、階段を上ったり下りたりしてやっと1階のエレベーター前に着いたけれど、なかなか来そうになくて、4階まで歩いて行きました。本番前に、ヤンネをすっかり引っ張り回してしまいました。ハーハー、ゼイゼイ言いたいところをガマンして、満席の会場の真ん中を歩いて行きました。

ステージは、当然4人用にセッティングしてあります。「二人が来られない事を、やっぱり話さない訳にいかないだろうなー」
決心を固めて、なるべく暖かい目で見て頂ける調子で「間に合わないかもしれない」事情を説明し、本来バンドネオンが見られることを期待されている事は分かっているので、「歴史的にバンドネオンはタンゴでは後発である事、バンドネオン抜きでもタンゴは成立する話」をして、ヤンネと二人のステージを始めました。


幸い、お客様の反応は大変暖かく、話に大きくうなずいて下さるし、笑って欲しいところでは笑って下さるし、大変救われました。40分を7曲で持たせないといけないので、時計をチラチラ見ながら、ヤンネと初めて会ったオウルンサロ音楽祭の話もしました。そして、何とか終えました。「いやー、二人でも充分聴き応えあった。時間があっという間だった」と駆け寄って言って下さる方、「そう、そう」と同意して下さる方もいらして、ホントに有り難かったです。

しかし、5分後には《田部雅美フレンズ》が始まるのです。ヤンネに帰り道の行き方を説明しながら、また階段を1階まで駆け下りるのでありました。

ヤンネ&マルッティ

2010-05-16 13:01:32 | Weblog
金曜日に、バイオリンのヤンネ舘野さんと、フィンランド人ピアニストのマルッティ・ラウティオさんのデュオ・コンサートが、青葉台のフィリアホール内・リハーサル室で行われました。

マルッティ・ラウティオさんは、舘野泉さんのお弟子さんで、私は2001年のオウルンサロ音楽祭で彼が演奏するところを見たのが初めで、その後オウルンサロ音楽祭 in 神戸でも、また昨年夏の逗子教会でのテノール・畑儀文さんとの共演など、度々演奏を拝見しています。

卓越した技術に裏づけられた、限界の無い力強い表現力が彼の特徴であり、個性になっています。時として、激しい火の玉となったかと思うと、幻想的な霧の中に様々な色をにじませたり、強く印象に残るピアニストです。殊に、以前シューベルトの『菩提樹』の伴奏を聴いた時のことは、忘れられません。聴いたことのないような、激しく面白い『菩提樹』でした。

ヤンネとマルッティさんの二人の演奏を楽しみに聴きに伺おうと思っていたら、数日前に「譜めくりを頼めませんか?」とヤンネのマネージャー明子さんから連絡がありました。「それでは、ゲネプロから行きましょう」と4時半に着いたら、譜めくりが必要な曲のリハはもう終わっていました・・。

リハーサル中に打ち合わせをするお二人。 

  ゲネプロで独奏曲を弾くマルッティさん。


曲目は、シベリウスやパルムグレンといったフィンランドの作曲家の小品、生誕200年に因んでシューマン、リスト、ショパンの作品。お得意のスペインもの、ファリャの『ダンス・エスパニョール』 五月に因んでフォーレの『五月』有名な歌曲『夢のあとに』など、サロン風のプログラムでしたが、私が譜めくりを頼まれたシューマンのバイオリンとピアノの為のソナタ第一楽章と、ピアノ独奏のショパンのバラードはマルッティさんらしい、力強く大胆なうねりを感じる演奏でした。

ヤンネのパパであり、マルッティさんの師匠である舘野泉さんもいらしていて、泉さんのお母様、妹さんもいらして、ウチも義妹と姪も聴かせて頂いて、友人、知人の暖かい、良い意味でファミリーな雰囲気でありながら芸術性の高い、理想的なサロン・コンサートでした。


もしかしたら、11月にヤンネがリーダーの《タンゲロス・アルティコス》のコンサートがこの場所で催されるかもしれません。