JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「にっぽん泥棒物語」

2010-06-10 | 映画(DVD)
「喜劇映画パラダイス」

「にっぽん泥棒物語」1965年 東映 監督:山本薩夫

土蔵破りに入ろうとして不気味な集団を目撃する男。その直後に列車転覆事故が勃発する。21世紀になっても謎とされている松川事件を思わせるような犯罪を、うまく絡ませた恐ろしくも楽しい喜劇。

巨匠・山本薩夫の映画はあまり観ていないからなんだろうけど、遂にその真価を見てしまったって感じ。(有名な作品ほとんど見てませんから
更正して幸福を掴み大事な妻子を守りたい男が他人の冤罪のために事実を証言するという重たい内容をユーモアの中で法廷喜劇へと昇華させる。こういう喜劇もあるんだね。

強烈な東北訛りで進行。何を言っているかは雰囲気から辛うじて理解できる範囲内。

林田儀助の三国連太郎と安東警部補・伊藤雄之助に尽きます。

例えば弟子の江原慎二郎のドジっぷりというのも笑いの要素ではありますが、この映画に関してはそのようなものは屁みたいなもんです。
伊藤雄之助と三国連太郎の取調べでのやりとりの絶妙さ。

三国連太郎で言うと例えば、刑務所の風呂場の場面で西村晃が「俺の石鹸を盗んだ泥棒はどいつだ!」と息巻いていると、三国連太郎が「何、言ってんですか。ここにいるのは皆、泥棒じゃないか」と言う。これなどはギャグ・ジョークそのものの威力は並程度なのに三国連太郎のとぼけた物言いと間でもって、思わず爆笑させられてしまう。

上野駅で刑務所仲間の共産党員、木村信(鈴木瑞穂)の子供と会うシーン。それから最大の見所、最後の法廷シーンで泣かせる。

鈴木瑞穂演じる木村信が共産党員として徹底的に前向きで明るいところも泣かせるポイントになってるようだ。
ただ、子供が父のため薬を取ろうと赤とんぼを追いかけていたのが4歳だとすると、上野駅のシーンまで5年くらいしか経ってないんじゃないの。計算おかしくないか。子供はあっという間に中学生じゃないのか。子供の成長を止めてまでして泣かせようというのはズルくないか。

それとこの映画、緑魔子が三国連太郎の妹役で出ているのだけれど、全く魅力がない(そういう役柄ではあるけど)今まで見た緑魔子の中でこんなに平凡でつまらないのは初めて。そこん所どうなんですか、山本監督。

室田日出男も意外なキャスティングで登場して意表を突かれる。

ともあれ、演技者の技量と監督の鋭い描写で人間ドラマが表出して感動的な作品になっている。

神保町シアター

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