人民日報の記事などを読んでいると、文章の大意を把握するのに、句読点をはじめとする“標点符号”が少なからぬ役割を果たしていることに気がつく。今回は、“標点符号”をテーマとしたい。
使用したテキストは、胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年である。
一、標点符号の作用
“標点符号”は、書面語の中で欠くことのできない補助工具であり、読者が文の構造を理解し、語気を鮮明にし、文意を正確に理解することを助ける。“標点符号”には、“点号”と“標号”の二種類が含まれる。
“点号”には、句号(句点。終止符。“。”または“.”)、問号(疑問符。“?”)、嘆号(感嘆符。“!”)、冒号(コロン。“:”)、分号(セミコロン。“;”)、逗号(コンマ。読点。句読点。“,”)、頓号(読点。“、”)がある。
“標号”には、引号(引用符号。クォーテーション・マーク。“”、‘’、『』、「」)、括号(かっこ。小括号()、中括号[]、大括号{})、破折号(つなぎ符号。ダッシュ。“―”)、省略号(省略記号。リーダー。“……”)、専名号(固有名詞記号。横組みの場合、アンダーライン。縦組みの場合、傍線が一般的。)、書名号(書名であることを示す。普通は、《》、または文章の下に~~を用いる)、着重号(強調符号。傍点、アンダーラインなど。)、音界号(“間隔号”ともいう。区切り符合。中黒。中点。“・”)がある。
“点号”は、口語の中で長短の異なる停頓(ポーズ)を表すので、“点号”を用いるかどうか、どの“点号”を用いるかは、先ず口語の中の停頓の状況に基づかねばならない。しかし“点号”は口語中の停頓や書面上の転化のみと考えてはならない。なぜなら、第一、口語中の停頓は文章構造の必要に基づく場合がある。この他、その他の必要に基づき、例えば気分を換えたり、聴衆が記録しやすいようにするのが目的の場合などがある。“点号”の表す停頓は文章の構造に適応しなければならない。構造上、間隔を空けることのできない所には“点号”を用いることができない。第二、文章の構造に関係する停頓は、必ずしも“点号”を用いて表すわけではない。第三、“点号”の作用は停頓の表示だけでなく、同時に語気も表す。
“標号”は書面語の中でことばの性質や作用を表す。“標号”を用いることで、意味がより明確になるだけでなく、ことばがより精練される。例えば、別の人の発言を引用する時、“引号”を用いないと、誤解を生じやすい。また文章中に注釈部分を挿入する時、“括号”を用いないと、多くの要らないことばを費やさねばならない。この他、いくつかの“標号”は特定の語気や口ぶり(“口気”)を表現する。
二、標点符号と語気、口ぶりの関係
(一)“点号”と語気の関係
全ての文は、単文であれ複文であれ、文章全体の一貫した語気を持っており、書面語では句点、疑問符、感嘆符などを用いて表す。陳述する語気では句点を用い、疑問の語気では疑問符を用い、感嘆の語気では感嘆符を用い、祈りの語気では、語気の強弱により、感嘆符を用いたり句点を用いたりする。文末の“点号”の使用で、よく見かける誤りは句点の使用が少なく、感嘆符を乱用したり、疑問符を使わないといけない時に使わなかったり、使ってはいけない時に使ったりすることである。
句点をあまり用いず読点(コンマ)ばかり用いるのもよく見かける誤りで、こういう現象が発生するのはたいてい、文章を書く人が明確な文の概念を持っていないからである。感嘆符の多用は誤解から生じることが多く、感情を帯びた文には必ず感嘆符を用いないといけないと思ってしまうのである。実際は、感嘆符は強烈な感情を表すので、乱用するとその効果を失ってしまう。疑問符の誤用は主に平叙と疑問の区分が不明確であるために起こる。
文末に疑問符を用いるかどうかは、文の中に疑問代詞があるかどうかや文末に“呢”、“麼”の類があるかどうかが根拠になるのではない。疑問代詞は必ずしも疑問を表さず、語気詞“呢”、“麼”等も疑問以外の語気を表すことができる。したがって、下記の例のような文では疑問符は用いない。
(1)咱們的人可不知都在哪儿,怎麼能跟他們取上聯系才好呢。
(2)我是這麼想的,可不知道他的意思怎麼様。
これらの文は相手方の何らかの回答を期待しておらず、疑問の語気が無いので、疑問符を用いない。反対に、形式上は上記の文とたいへん似ているが、相手方の回答を期待しているので、疑問符が必要な場合がある。例えば:
(3)咱們的人可不知都在哪儿,你説怎麼才能跟他們取上聯系?
(4)我是這麼想的,不知道你的意思怎麼様?
疑問文の形式は、疑問代詞によってのみ表すのではない。ことばの正反を重ねる形でも疑問を表すことができる。反語文は相手方の回答を要求しないが、疑問文の形式を用いるので、通常、疑問符を用いる。作者によっては、反語文の文末に感嘆符を用い、感嘆の語気を強調する。例えば:
(5)現在我們也燃放爆竹,但是誰想到那和“駆鬼”之類的迷信有牽連!
反語文が平叙文に疑問の語調を加えた構成になっている場合は、書面上は疑問符のみに依って表現する。例えば:
(6)面対這種情况,她能不表示意見?
平叙と疑問の間に跨る文では、疑問が確信より大きければ、疑問符を用い、確信が疑問より大きければ、疑問符は用いない。例えば:
甲問:她今天家里有事,大概不会来吧?
乙答:大概不会来把吧。
選択疑問文は、一つの文中に複数の疑問の内容を含んでいたとしても、一つの文であるので、文末に疑問符を一つ付けるだけである。例えば:
(7)咱們是先做功課后開会,還是先開会后做功課?
強調の為、選択の内容をいくつかの文に分けて言う場合、各文の文末には疑問符を付けなければならない。例えば:
(8)站在他們的前頭領導他們呢?還是站在他們的后頭指手画脚地批評他們呢?還是站在他們的対面反対他們呢?
・指手画脚 zhi3shou3hua4jiao3 あれこれ人のあら捜しをする。
短い選択疑問文では、中間にコンマ(読点)を置かなくてもよい。例えば:
(9)今天是星期四還是星期五?
語気や口ぶりを表現する時、文中の“点号”(句読点)にはおおよそ二つの作用がある。ひとつはあることばを強調する。ひとつは感情の高ぶりを表現する。例えば:
(10)龍須溝啊,不是坏地方!
(11)事実証明:我們的估計是正確的。
(12)那是,……実在,我説不清……。
例(10)、(11)の文中の停頓(ポーズ)は強調の為である。コンマを用いて強調するのは、しばしばその前の語句である。コロン(“:”)を用いて強調するのは、その後ろの部分である。例(12)の文中の停頓は感情の高まった気持ちを表現している。感情が高まると、興奮であれ、快楽であれ、憤怒であれ、悲しみであれ、ことばの勢いがにわかに衰えることがしばしば見られる。コンマはしばしば、これを用いることで、こうしたことばの勢いの衰弱を表す。
(二)“標号”と語気の関係
“破折号”(つなぎ符号。ダッシュ。“―”)は、これを用いることで話の中断や語気、口ぶりの突然の変化を表す。例えば:
(13)今天我本来打算去一趟,可是 ――
話の中断後、別の話題で再び話を始めることができるが、この時、語気が突然変化する。例えば:
(14)“好香的干菜,―― 听到了風声嗎?”趙七爺站在七斤的后面七斤嫂的対面説。
(15)很白很亮的一堆洋銭,而且是他的 ―― 現在不見了!
“破折号”はまた、音声の引き延ばしを表現することができる。例えば:
(16)他們走不上二三十歩遠,忽聴得背后“唖 ―― ”的一声大叫。
“省略号”(省略記号。リーダー。“……”)は語気の断続を表す。例えば:
(17)喂,你哪里?……你找老王,她就在這儿。
(18)対……対不起!我……大概認錯了。
“引号”(引用符号。クォーテーション・マーク。“”、‘’、『』、「」)は、「特別に引き合いに出す」という作用がある。それが肯定的(“正面”)な引用であれ、否定的(“反面”)な引用であれ、目的は強調することばを明示し、読者の注意を引きつけることにある。例えば:
(19)世上最可笑的是那些“知識里手”,有了道聴途説的一知半解,便自封為“天下第一”,適足見其不自量而已。
・里手 li3shou3 玄人
・道聴途説 dao4ting1tu2shuo1 聞きかじりでものを言う
・一知半解 yi1zhi1ban4jie3 生はんか
・不自量 bu4zi4liang4 身の程知らず
(20)在群衆面前把你的資格擺得越老,越像個“英雄”,越要出売這一套,群衆就越不買你的帳。
・買帳 mai3zhang4 相手の好意や才能を認める。(否定文に用いることが多い)
例(19)の“引号”の中のことばの意味は変わらず、肯定的(“正面”)引用である。例(20)の“引号”の中のことばの意味は一般的解釈とは異なり、“英雄”は“所謂英雄”(「いわゆる」英雄)という意味で、否定的(“反面”)引用である。肯定的に引用、或いは否定的に引用されたことばは、話の中では何れも強調された語気で表わされる。
【原文】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年より翻訳
使用したテキストは、胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年である。
一、標点符号の作用
“標点符号”は、書面語の中で欠くことのできない補助工具であり、読者が文の構造を理解し、語気を鮮明にし、文意を正確に理解することを助ける。“標点符号”には、“点号”と“標号”の二種類が含まれる。
“点号”には、句号(句点。終止符。“。”または“.”)、問号(疑問符。“?”)、嘆号(感嘆符。“!”)、冒号(コロン。“:”)、分号(セミコロン。“;”)、逗号(コンマ。読点。句読点。“,”)、頓号(読点。“、”)がある。
“標号”には、引号(引用符号。クォーテーション・マーク。“”、‘’、『』、「」)、括号(かっこ。小括号()、中括号[]、大括号{})、破折号(つなぎ符号。ダッシュ。“―”)、省略号(省略記号。リーダー。“……”)、専名号(固有名詞記号。横組みの場合、アンダーライン。縦組みの場合、傍線が一般的。)、書名号(書名であることを示す。普通は、《》、または文章の下に~~を用いる)、着重号(強調符号。傍点、アンダーラインなど。)、音界号(“間隔号”ともいう。区切り符合。中黒。中点。“・”)がある。
“点号”は、口語の中で長短の異なる停頓(ポーズ)を表すので、“点号”を用いるかどうか、どの“点号”を用いるかは、先ず口語の中の停頓の状況に基づかねばならない。しかし“点号”は口語中の停頓や書面上の転化のみと考えてはならない。なぜなら、第一、口語中の停頓は文章構造の必要に基づく場合がある。この他、その他の必要に基づき、例えば気分を換えたり、聴衆が記録しやすいようにするのが目的の場合などがある。“点号”の表す停頓は文章の構造に適応しなければならない。構造上、間隔を空けることのできない所には“点号”を用いることができない。第二、文章の構造に関係する停頓は、必ずしも“点号”を用いて表すわけではない。第三、“点号”の作用は停頓の表示だけでなく、同時に語気も表す。
“標号”は書面語の中でことばの性質や作用を表す。“標号”を用いることで、意味がより明確になるだけでなく、ことばがより精練される。例えば、別の人の発言を引用する時、“引号”を用いないと、誤解を生じやすい。また文章中に注釈部分を挿入する時、“括号”を用いないと、多くの要らないことばを費やさねばならない。この他、いくつかの“標号”は特定の語気や口ぶり(“口気”)を表現する。
二、標点符号と語気、口ぶりの関係
(一)“点号”と語気の関係
全ての文は、単文であれ複文であれ、文章全体の一貫した語気を持っており、書面語では句点、疑問符、感嘆符などを用いて表す。陳述する語気では句点を用い、疑問の語気では疑問符を用い、感嘆の語気では感嘆符を用い、祈りの語気では、語気の強弱により、感嘆符を用いたり句点を用いたりする。文末の“点号”の使用で、よく見かける誤りは句点の使用が少なく、感嘆符を乱用したり、疑問符を使わないといけない時に使わなかったり、使ってはいけない時に使ったりすることである。
句点をあまり用いず読点(コンマ)ばかり用いるのもよく見かける誤りで、こういう現象が発生するのはたいてい、文章を書く人が明確な文の概念を持っていないからである。感嘆符の多用は誤解から生じることが多く、感情を帯びた文には必ず感嘆符を用いないといけないと思ってしまうのである。実際は、感嘆符は強烈な感情を表すので、乱用するとその効果を失ってしまう。疑問符の誤用は主に平叙と疑問の区分が不明確であるために起こる。
文末に疑問符を用いるかどうかは、文の中に疑問代詞があるかどうかや文末に“呢”、“麼”の類があるかどうかが根拠になるのではない。疑問代詞は必ずしも疑問を表さず、語気詞“呢”、“麼”等も疑問以外の語気を表すことができる。したがって、下記の例のような文では疑問符は用いない。
(1)咱們的人可不知都在哪儿,怎麼能跟他們取上聯系才好呢。
(2)我是這麼想的,可不知道他的意思怎麼様。
これらの文は相手方の何らかの回答を期待しておらず、疑問の語気が無いので、疑問符を用いない。反対に、形式上は上記の文とたいへん似ているが、相手方の回答を期待しているので、疑問符が必要な場合がある。例えば:
(3)咱們的人可不知都在哪儿,你説怎麼才能跟他們取上聯系?
(4)我是這麼想的,不知道你的意思怎麼様?
疑問文の形式は、疑問代詞によってのみ表すのではない。ことばの正反を重ねる形でも疑問を表すことができる。反語文は相手方の回答を要求しないが、疑問文の形式を用いるので、通常、疑問符を用いる。作者によっては、反語文の文末に感嘆符を用い、感嘆の語気を強調する。例えば:
(5)現在我們也燃放爆竹,但是誰想到那和“駆鬼”之類的迷信有牽連!
反語文が平叙文に疑問の語調を加えた構成になっている場合は、書面上は疑問符のみに依って表現する。例えば:
(6)面対這種情况,她能不表示意見?
平叙と疑問の間に跨る文では、疑問が確信より大きければ、疑問符を用い、確信が疑問より大きければ、疑問符は用いない。例えば:
甲問:她今天家里有事,大概不会来吧?
乙答:大概不会来把吧。
選択疑問文は、一つの文中に複数の疑問の内容を含んでいたとしても、一つの文であるので、文末に疑問符を一つ付けるだけである。例えば:
(7)咱們是先做功課后開会,還是先開会后做功課?
強調の為、選択の内容をいくつかの文に分けて言う場合、各文の文末には疑問符を付けなければならない。例えば:
(8)站在他們的前頭領導他們呢?還是站在他們的后頭指手画脚地批評他們呢?還是站在他們的対面反対他們呢?
・指手画脚 zhi3shou3hua4jiao3 あれこれ人のあら捜しをする。
短い選択疑問文では、中間にコンマ(読点)を置かなくてもよい。例えば:
(9)今天是星期四還是星期五?
語気や口ぶりを表現する時、文中の“点号”(句読点)にはおおよそ二つの作用がある。ひとつはあることばを強調する。ひとつは感情の高ぶりを表現する。例えば:
(10)龍須溝啊,不是坏地方!
(11)事実証明:我們的估計是正確的。
(12)那是,……実在,我説不清……。
例(10)、(11)の文中の停頓(ポーズ)は強調の為である。コンマを用いて強調するのは、しばしばその前の語句である。コロン(“:”)を用いて強調するのは、その後ろの部分である。例(12)の文中の停頓は感情の高まった気持ちを表現している。感情が高まると、興奮であれ、快楽であれ、憤怒であれ、悲しみであれ、ことばの勢いがにわかに衰えることがしばしば見られる。コンマはしばしば、これを用いることで、こうしたことばの勢いの衰弱を表す。
(二)“標号”と語気の関係
“破折号”(つなぎ符号。ダッシュ。“―”)は、これを用いることで話の中断や語気、口ぶりの突然の変化を表す。例えば:
(13)今天我本来打算去一趟,可是 ――
話の中断後、別の話題で再び話を始めることができるが、この時、語気が突然変化する。例えば:
(14)“好香的干菜,―― 听到了風声嗎?”趙七爺站在七斤的后面七斤嫂的対面説。
(15)很白很亮的一堆洋銭,而且是他的 ―― 現在不見了!
“破折号”はまた、音声の引き延ばしを表現することができる。例えば:
(16)他們走不上二三十歩遠,忽聴得背后“唖 ―― ”的一声大叫。
“省略号”(省略記号。リーダー。“……”)は語気の断続を表す。例えば:
(17)喂,你哪里?……你找老王,她就在這儿。
(18)対……対不起!我……大概認錯了。
“引号”(引用符号。クォーテーション・マーク。“”、‘’、『』、「」)は、「特別に引き合いに出す」という作用がある。それが肯定的(“正面”)な引用であれ、否定的(“反面”)な引用であれ、目的は強調することばを明示し、読者の注意を引きつけることにある。例えば:
(19)世上最可笑的是那些“知識里手”,有了道聴途説的一知半解,便自封為“天下第一”,適足見其不自量而已。
・里手 li3shou3 玄人
・道聴途説 dao4ting1tu2shuo1 聞きかじりでものを言う
・一知半解 yi1zhi1ban4jie3 生はんか
・不自量 bu4zi4liang4 身の程知らず
(20)在群衆面前把你的資格擺得越老,越像個“英雄”,越要出売這一套,群衆就越不買你的帳。
・買帳 mai3zhang4 相手の好意や才能を認める。(否定文に用いることが多い)
例(19)の“引号”の中のことばの意味は変わらず、肯定的(“正面”)引用である。例(20)の“引号”の中のことばの意味は一般的解釈とは異なり、“英雄”は“所謂英雄”(「いわゆる」英雄)という意味で、否定的(“反面”)引用である。肯定的に引用、或いは否定的に引用されたことばは、話の中では何れも強調された語気で表わされる。
【原文】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社1995年より翻訳