幻のHelterSkelter

高校生の頃ビートルズ大百科という本を
買った。

今のようにカラー印刷ではなく
表紙以外全てモノクロ印刷の本だったが、
細かいエピソードが興味深く、
しかも手に入った数少ないBeatles関連の
書籍だったので夢中になって読んだ。

その中の１節ホワイトアルバムの
レコーディングの際、HelterSkelterの
初期のテイクは２４分に及んだという
記述があった。

それから数年後大学を卒業した年の
１９９０年に
ビートルズ/レコーディングセッション
という本が発売された。

その本によると、ホワイトアルバムに
収録されたHelter Skelterは４分３０秒程の
ごく普通の長さだが、最初に録音された
ヴァージョンはTake1が１０分４０秒
Take2は１２分３５秒、Take3は２７分１１秒
だったと書かれていた。

ビートルズ大百科の記述と合致する。

それまでにも、DeepPurpleのSpaceTruckin’や
LedZeppelinのDazed aunConfusedのように
元々は５分ぐらいの曲が２０分ぐらいになった
ライヴヴァージョンを聴いていたので、
HelterSkelterのロングヴァージョンを
聴いてみたいと思った。

その頃、このビートルズレコーディング
セッションの著者マークルウィーソンが
この本を著述の際に聴いたビートルズの
マスターテープをナイショでコピーしたもの
が出所との噂のビートルズのアウトテイクの
ブートレッグが大量に出回った。

それまで出回っていたものとは格段に
音質が良く、膨大な量の音源が一気に
発売されたので、きっと犯人は
マークルウィーソンで間違いないだろう。

そこで気になるのはHelterSkelterだ。
当時は毎週のように西新宿に通い
海賊盤をチェックしたがとうとう
２７分のHelterSkelterのは出会えなかった。

何度か海賊盤屋のチラシに
HelterSkelter２７分版ついに発売
などと謳ったのを見たが結局それら
が発売されることはなかったようだ。

アウトテイクの海賊盤が大量に
発売されたからだろうことは
明白な、公式のアウトテイク集
Anthology１、２、３の発売が発表
された。

そこにはついに初期録音の
HelterSkelterが収録されることも
発表された。

Anthologyは各２枚組だが同時発売ではなく
１が１９９５年２が１９９６年、
３も多分１９９６年の後半というふうに
発売された。
で、HelterSkelterは３に収録、
存在を知ってから１０年近く待ちに
待って手に入れた

Anthology3のDisc1の３曲目

ありゃ？

HelterSkelter(4:36)

４分３６秒

普通の長さだ。

ライナーノーツを読むと
１２分のTake２を約５分に編集した
と書かれていた。

何てこった！

確かにホワイトアルバムのヴァージョンと
全然違うアレンジだが、どんな演奏でこの
曲が２７分にもなるのかが聴きたかったのに
編集してしまっては一番知りたかったところ
が謎のままだ。

それからさらに２０年以上たった２０１８年
ホワイトアルバムの５０周年記念Editionのが
発売される際HelterSkelterの初期ヴァージョンが
収録されることになった。

残念ながら２７分のTake3ではなく１２分のTake2だが
今回は１２分きちんと収録されるらしい。

発売になった１２分のHelterSkelterを聴いてみた。

なるほどね。

特に展開もなくAnthology3で聴いたスローで
ブン、ブン、ブン、ブン、というベースが
延々と繰り返される。

本当かどうかわからないが２７分のTake3も基本的には
これをさらに長くしただけとのことだ。

気がすんだ。

約３０年待った音源がこれとは…。



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