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新型コロナ発生源と疑われる中国「野生動物食」の知られざる実態

2024年10月03日 03時03分15秒 | 社会のことなど
新型コロナ発生源と疑われる中国「野生動物食」の知られざる実態

 2/25/2020
 
前略
 
2月19日公開の「新型コロナの発生源は『武漢の華南海鮮市場』説は誤りの可能性」の記事で報告したように、世界的な医学雑誌「ランセット」のオンライン版が1月24日付で掲載した中国人研究グループの論文は、「武漢肺炎は初期の段階では華南海鮮市場とは何ら関連なく発生した」と述べている。

  恐らく、この論文は華南海鮮市場の「野味」商店で販売されている野生動物は新型コロナウイルスの発生源ではなく、中間宿主でもないということを示しているのではないだろうか。
 
野味」食材案内 
 それでは「大衆畜牧業味」が販売していた商品を「大衆畜牧野味」と題された価格表に従って見てみよう。当該価格表には42種類の商品名が書かれていて、生きている動物をそのまま販売したり、「活殺現宰(その場で殺して食肉に加工する)」、急速冷凍、宅配、長距離託送代行などのサービスが可能となっていた。扱い商品を分類して具体的に示すと以下の通り。
 
人類の歴史と共にある野生動物食
 
 ところで、フランス通信社のニュースサイト(AFPBB)は2月16日付で「ウイルス懸念のコウモリ肉、市場で売買続く インドネシア」と題する記事を配信した。

 この記事によれば、インドネシアのスラウェシ(Sulawesi)島北東部のトモホン(Tomohon)に所在する野生動物市場では、新型コロナウイルスを恐れる当局からの販売中止要請を無視して、今もコウモリやネズミ、ヘビなどが売買されていて、販売業者の商売は繁盛しているという。記事に添付された動画には屋台の上に並べられて販売される大型のコウモリやバーナーで焼かれる蛇肉が映っていた。

 インドネシアも中国と同様に野生動物を食べる習慣は古い昔から伝えられた来た伝統であり、一朝一夕に変えられない文化と言える。中国では2002~03年のSARS発生でSARSウイルスの元凶とされた「野味」という文化が消滅するとか思われたが、「野味」文化はしぶとく生き残り、武漢市の華南海鮮市場でも「野味」商店は存続していたのである。

 17~18年前のSARSの時も、今回のSARS-CoV-2 でも、真っ先にウイルスの発生源として疑われるのは「野味」の原料となる野生動物であるが、それらを捕獲や養殖した上で食材として食べるのは人間であり、犠牲者として食べられる野生動物には何の罪もない。ましてや、彼ら野生動物は数千年・数万年の歴史の中で人間によって捕獲されて食べられて来た歴史があり、野生動物を食材として食べることは世界各国で固有の文化となっていると言っても過言ではない。

  上述したインドネシアのトモホンにある野生動物市場も武漢の華南海鮮市場内の「野味」商店もそうした古い文化を伝承しているものであり、そうした市場で購入した野営動物を食べたことで感染症を発症したという前例は皆無に近かったのではないだろうか。もしも感染症が度々発生していたなら、野生動物市場も「野味」商店もとっくの昔に消滅していたはずである。中国ではSARSの後も「野味」商店は存続していたではないか。


 【鳥類】孔雀(クジャク)、大雁(ヒシクイ)、鴻雁(サツラガン)、火鶏(七面鳥)、闘鶏(シャモ)、野鶏(コウライキジ)、斑鳩(キジバト)、竹鶏(コジュケイ)、蔵鶏(チベットニワトリ)、線鶏(カポン=去勢されたニワトリ)、育檳鳥(アライソシギ)、珍珠鶏(ホロホロチョウ)、貴妃鶏(ゴイシチャボ)、鷓鴣(シャコ=キジ科の鳥)、土鴿(カワラバト)、鉄雀(スズメ)、白鵞(ハクチョウ)、香椿鳥(ライチョウ)、駝鳥(ダチョウ)、鴨豚(ノバリケン=鴨科の鳥)

 【獣類】山羊(野ヤギ)、野兎(野ウサギ)、竹鼠(タケネズミ)、麝香鼠(ジャコウネズミ)、青根貂(マスクラット=ネズミ科)、海狸鼠(ヌートリア)、袋鼠(カンガルー)、松鼠(リス)、狐狸(キツネ)、狼仔(オオカミの子)、果子狸(ハクビシン)、刺猬(ハリネズミ)、狗狸獾 ( アジアアナグマ)、猪狸獾(ブタアナグマ)、花猪(ハナイノシシ)、石頭猪(セキトウイノシシ)、狍子(ノロ=鹿科)、野猪(イノシシ)、豚鼠(テンジクネズミ)、荷蘭猪(テンジクネズミの別称)、蔵香猪(チベットミニブタ)、豪猪(ヤマアラシ)、湘猪(湖南ブタ)、香豚(ミニブタ)、氂牛(ヤク=ウシ科)、駱駝(ラクダ)、梅花鹿(ニホンジカ)、麂子(キョン=シカ科)、樹熊(タケネズミ)、鳥梢蛇(カサントウ=無毒の蛇)

<注>日本のメディアには「樹熊」をオーストラリア原産の「コアラ」と勘違いして報じたところがあったが、「樹熊」は中国で「芒熊」と呼ばれる、別名「タケネズミ」を指しているようだ。そうなると価格表上に「タケネズミ」が重複することになるが、同じタケネズミでも種類別に名称を変更している可能性が考えられる。

 【水生類】娃娃魚(オオサンショウウオ)、鰐魚(ワニ)、山亀(ヤマのカメ)、山瑞甲魚(イボクビスッポン)、海蛇(ウミヘビ)、虎紋蛙(トラフガエル)、水貂(ミンク)
 
【虫類】蜈蚣(ムカデ)、金蝉(セミの幼虫)、蝎子(サソリ)、蝸牛(カタツムリ)、蜂蛹(ハチの子)、蚕蛹(カイコの子)、螞蚱(イナゴ)、木虫(カミキリムシの幼虫)、竹虫(竹象鼻虫の幼虫)

 主な商品の価格を見てみると以下の通り。

 生きたクジャク :500元(約8000円)/羽
クジャクの肉 :350元(約5600円)/羽
生きたハクビシン:130元(約2080円)/斤(=500グラム)
ハクビシンの肉 : 70元(約1120円)/斤
生きたタケネズミ: 85元(約1360円)/斤
タケネズミの肉 : 75元(約1200円)/斤
小さな生きた鹿 :6000元(約9万6000円)/匹
鹿のペニス :400元(約6400円)/本
ムカデ :5元(約80円)/匹 <価格表上で最安値なのがムカデである>

 中国語版のウイキペディアには、「ハクビシンは体躯が痩せて長く、成人の体長は45~65センチメートル、体重4.5~8キログラム」とある。上述の通り、生きたハクビシンは130元/斤(=500グラム)あるから、体重4.5キログラムのハクビシンの販売価格は1170元(約1万8720円)/匹となる。これが高いのか安いのか判断できないが、生きたハクビシンの価格はハクビシンの肉より1斤(=500グラム)当たりで60元(約960円)高いから、殺してすぐ食肉に加工した方が新鮮で美味なのであろう。

 華南海鮮市場が新型コロナウイルスの発生源として報じられたことで、広く知られることになったのは「竹鼠(タケネズミ)」である。タケネズミは養殖されている食用のネズミである。ここでいうタケネズミは中国の中部・南部に幅広く分布している「中華竹鼠」を指すが、彼らの体長は30~40センチ、体重1.5~3キログラムであるという。

 価格表では生きたタケネズミは85元/斤とあるので、体重1.5キログラムのタケネズミの販売価格は255元(約4080円)/匹となる。4.5キログラムのハクビシン1匹と1.5キログラムのタケネズミ3匹(合計4.5キログラム)の価格比較では、前者が1170元に対して後者が765元で、ハクビシンの方が高価であることが分かる。

  なお、鹿のペニスというのは滋養強壮に効果のある食材で酒に漬けて飲むのが一般的であり、人々の需要は大きい。筆者は甘粛省の山奥にある村落で「金銭肉」と呼ぶ円形で真ん中に穴が開いたおつまみ様の肉を食べさせられたことがあったが、それは驢馬(ロバ)のペニスを輪切りにしたものだった。食べた後でその事実を知らされて、思わず自分の股間に痛みを感じた覚えがあるが、どのような味だったかは記憶がない。
 
ここまでやる「中国の悪食」
 
 さて、中国には「禁菜(禁じられた料理)」と呼ばれる特殊な料理がある。珍しいものは高級であり、めったにない度合いが高ければ貴重な物として高い評価を受ける。それは料理でも同様だが、貴重な物を入手するのは容易ではなく、時には非常に残酷なものとなるのは必然か。

 しかも、こうした貴重な料理は客人をもてなす際に供されるのが通例である。中東では客人をもてなす際に羊の丸焼きを準備するが、貴重品である羊の目玉と脳みそは客人に提供される。そうした文化を持たない日本人には目玉や脳みそを食べるのは残酷に思えて辟易するのが通常だが、この難関を通過しないと本当の信頼を勝ち取ることはできない。

 そこで、「野味」に関連する「禁菜」を4例紹介すると下記の通り。

 【例1】鉄板甲魚(鉄板スッポン)
調味料入りの冷たいスープを入れた鍋に生きたスッポンを投入して弱火で煮る。鍋の中は徐々に熱くなり、スッポンは鍋の中でもがき苦しむが、人はそれを見て興奮する。熱さに七転八倒するスッポンはスープを飲み、それによって調味料がスッポンの体内に染み込む。こうしてできたスッポンの姿煮は肉の中まで調味料が染み込み、極めて美味となる。

 【例2】三吱児(3回ちゅうと鳴く子供)<別名:三叫鼠(3回鳴くネズミ)>
「吱」という漢字はネズミなどが「ちゅう」と鳴く声を表す。出生直後の生きている子ネズミを何匹も皿に載せ、もう1つの皿に液体の調味料を入れておく。1匹の子ネズミを箸でつまむと、子ネズミは「ちゅう」と最初の鳴き声を上げる。そこで子ネズミを液体の調味料の中に漬けると、子ネズミは「ちゅう」と2回目の鳴き声を上げる。調味料に漬けた子ネズミを口の中へ入れると、子ネズミは「ちゅう」と3回目の鳴き声を上げる。料理名は前後3回の鳴き声に由来するが、この料理は何でも食べるという貪欲な動機と比類なき勇気を持っていないと味わうことはできないと言われているので、度胸試しの意味合いを持つ。

 【例3】炭烤乳羊 
出産直前の母羊を活きたまま炭火の上に載せてゆっくり丸焼きにする。焼きあがったらその腹を切り開いて羊の赤ん坊を取り出して、これを食べる。羊の赤ん坊は皮の歯触りが良く、肉が柔らかく、味は絶品だという。

 【例4】澆驢肉 (ロバ肉に熱湯をふりかける)
生きているロバを固定し、その横で湯を沸かしておく。客がロバの好みの部位を指定すると、コックがその部位の皮を剥ぎ、剥き出しになった肉に木製の柄杓で熱湯をかける。それを何回か繰り返すと肉が煮えて食べ頃になるので、コックはそれを切り取って客に提供する。この料理はロバ肉を食べるよりも、ロバの苦しむ姿を見るためのものである。

 上記は残酷な料理ばかりだが、いずれも庶民を対象にしたものではなく、金持ちが道楽で楽しんだり、客をもてなすために趣向を凝らして生み出された料理だと言える。

 動物愛護の観点から言えば、全く容認できない料理ばかりだが、こうした料理を好む変わった嗜好の持ち主がいるのも事実であり、法律で規制したり、禁じたとしても、彼らは法の抜け道を探して己の欲求を満足させるのが常である。

 それはさておき、すでに述べた事柄を総合して考えると、華南海鮮市場の「野味」が武漢肺炎の発生源であるという話は流言飛語(口づてに伝わる、根拠のない情報)のそしりを免れない「戯言(たわごと)」と言って良いように思えてならないのだが、果たして、その真相はいかに。

  真相の究明は前回のSARSでもうやむやのままで終わったが、今回のSARS-CoV-2でも前回と同様にうやむやで終わるのか。それでは進歩は何も望めない。]
 
2/25tue/2020
 
 
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