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写真:現代ビジネス
老後資金は足りるのだろうか。死後、子どもや親戚に迷惑をかけてしまわないだろうか。
3/10/2021
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誰もが抱くこうした不安に付け込んでくる存在―それが、保険会社と銀行だ。「万が一の保障もついて、おカネが増やせる」「死後の手続きをすべてお任せください」と、聞こえのいい宣伝文句で彼らは擦り寄ってくる。
だが、安易に契約を結ぶ前に一歩踏みとどまって考えてほしい。はたしてその商品は損なのか、得なのか。
定年間際、老後資金について考え始めた夫婦のもとに、保険の営業マンから電話がかかってくる。
「おカネを預けておくだけではもったいない。円建てなら安心です。ぜひ保険で運用しましょう」
こうやって勧められるのが変額保険だ。保険料を株式や債券で運用し、受け取れる保険金を増やせる。だが、逆に運用成績が悪ければ、満期保険金は保険料の支払額を下回る。つまり、「ハイリスク・ハイリターン」な保険商品なのだ。
変額保険について、大手生保6社の新契約年換算保険料は'17年度には約450億円だったが、'19年度には約780億円に膨れ上がっている。85歳まで加入できる商品もあり、高齢者も対象になっている。
では、この保険に加入すべきなのか。ファイナンシャルアソシエイツ代表の藤井泰輔氏が語る。
「保険会社A社の変額有期保険に60歳で加入したとします。保険料は月4万4220円で期間は10年、3%で運用できれば500万円を受け取ることができます。
ところが、払込保険料の総額は530万円に上る。つまり30万円も損をしているのです」 順調に運用しておカネを増やしたはずが、最終的に払った保険料のほうが多くなる。なぜ、こんなことが起きるのか。
「おひとりさま信託」ってどうなのか
Photo by iStock
その理由は、保険の運用コストにある。
「『特別勘定の運用費用』と『保険関係費用』が数%、上乗せされるからです。余分な手数料を保険会社に取られているわけです」(藤井氏) 欲をかいて儲けようと考え、中途半端な保険商品に騙されてはいけない。
夫婦のどちらかが旅立ってひとりになってからも、注意すべき商品がある。銀行の窓口を訪ねたところ、こんな言葉をかけられる。
「万が一の場合の手続きについて気になりますよね。実は葬儀や財産の処理や訃報連絡など、すべて銀行が解決できるサービスが登場しました」
「おひとりさま信託」という商品で、銀行に300万円程度を預け、死後の手続きを代行してもらうサービスだ。パソコンのデータ消去や家財の整理など、煩雑なことも任せられ、子どもがいない人や、子どもと疎遠な人の人気を集めている。
ただし、これも損か得かを考えたほうがいい。
いいカモになるだけ
まず知っておくべきことは、信託設定時に3万3000円、信託終了時に11万円+契約年数×6600円の手数料がかかるということだ。そのほかに葬儀代などの実費が引かれていく。65歳で加入し84歳で亡くなった人であれば、銀行に遺産から26万8400円が持っていかれるのだ。
ところが、この金額でやってもらえるサービスは、至極当たり前のものに過ぎない。疎遠だとしても残された子どもがやればいい。子どもがいない人でも兄弟姉妹、甥姪が相続人となり、手続きをやってくれるだろう。
「高い手数料をとる銀行を頼る前に、死後に残される相続人と話をしておくべきでしょう。『一番かわいがっている姪に財産を残す』などと遺言書に書き、葬儀や不動産の処分を任せる人もいます」(税理士・板倉京氏) 財産を継ぐ人がいない、天涯孤独の人であれば、迷惑をかけないために利用してもいい。
しかし、誰も相続人がいないという人はまれだ。銀行に丸投げする前に、まずは相続人となる親族と話したほうがいい。
保険会社や銀行も商売だ。丸投げをして楽をしようとすれば、いいカモになるだけだ。
『週刊現代』2021年2月27日・3月6日合併号より
コメント、ありがとうございます。
いろいろな選択肢があるのは、よいことですね☆
これからも宜しくお願い申し上げます・