(「河北新報」平成24年10月7日(日)付け記事より引用)
養護学校(現特別支援学校)が義務教育化された1979年の時点で学齢期(6~15歳)を過ぎていたために教育から取り残されていた重症心身障害者の就学が、宮城県でも昨年度始まった。教育の機会均等を求め続けた保護者の声を受けて、県教育委員会がようやく扉を開いた。50歳を超えた人たちが通う教室を訪ねると、年齢に関係なく学びを楽しむ姿があった。
互いに刺激し前向きに
9月中旬の午後、仙台市青葉区の医療型障害児入所施設エコー療育園の一室で、宮城県立光明支援学校(同市泉区)の訪問教育があった。車椅子で集まったのは、療育園に入所している小学5年から中学2年の4人。その中に、本年度、6年に編入た斎藤由美子さん(54)と佐藤裕美さん(52)の笑顔があった。
この日の授業のテーマの一つは「秋を感じる」。生徒たちはそれぞれ担当教諭に車椅子を押され、施設の庭に出た。植栽の観察をしながら、図工に使う葉を採った。
「この葉っぱ、採りますか?」。斎藤さんは担当の牛坂文枝教諭(47)の問い掛けにうなずき、助けを借りて元気よく葉を引っ張
った。
斎藤さんは未熟児で生まれ、1歳になったころに脳性まひと診断された。養護学校が義務化された時点で20歳だったために小学校に入れなかった。宮城県教委は学齢超過者の入学を2011年度に認め、斎藤さんはことし4月から教室に通い始めた。
斎藤さんは話すことができず、不自由な手や表情などで意思表示をする。牛坂教諭は斎藤さんの両親らと相談して、「物作りを通して手を動かす」 「友達や教師と関わりながら、活動を楽しむ」などの1年の目標を立てた。
牛坂教諭は「この半年で手の動きがスムーズになり、自分の考えをしっかりと伝えるようになった」と話す。
斎藤さんと同じ教室で学んでいる佐藤さんの父稔夫さん(81)も娘の成長を実感している。「通学するようになって、人との接
し方が柔らかくなってきた」と目を細める。
宮城県の学齢超過者の特別支援学校就学は40人程度となる見通しで、数年で希望者全員が学ぶことができる。対象者は小学6年を終えた後、中学3年に編入して、計2年間学ぶ。
※重症心身障害者の学齢超過問題
1979年に義務化されたものの、既に学齢期を過ぎていた人は義務教育から取り残された。保護者らの声を受けて、各都道府県
教育委員会はそれぞれの判断で15年以上前に学齢超過者の受け入れを始めた。東北では岩手県教委が2004年度に受け入れを始め、青森県教委も本年度始めた。現在は秋田県教委だけが受け入れていない。義務教育から取り残されたままの障害者はいまだに多数いるとみられるが、国は詳しい実態を把握していない。
養護学校(現特別支援学校)が義務教育化された1979年の時点で学齢期(6~15歳)を過ぎていたために教育から取り残されていた重症心身障害者の就学が、宮城県でも昨年度始まった。教育の機会均等を求め続けた保護者の声を受けて、県教育委員会がようやく扉を開いた。50歳を超えた人たちが通う教室を訪ねると、年齢に関係なく学びを楽しむ姿があった。
互いに刺激し前向きに
9月中旬の午後、仙台市青葉区の医療型障害児入所施設エコー療育園の一室で、宮城県立光明支援学校(同市泉区)の訪問教育があった。車椅子で集まったのは、療育園に入所している小学5年から中学2年の4人。その中に、本年度、6年に編入た斎藤由美子さん(54)と佐藤裕美さん(52)の笑顔があった。
この日の授業のテーマの一つは「秋を感じる」。生徒たちはそれぞれ担当教諭に車椅子を押され、施設の庭に出た。植栽の観察をしながら、図工に使う葉を採った。
「この葉っぱ、採りますか?」。斎藤さんは担当の牛坂文枝教諭(47)の問い掛けにうなずき、助けを借りて元気よく葉を引っ張
った。
斎藤さんは未熟児で生まれ、1歳になったころに脳性まひと診断された。養護学校が義務化された時点で20歳だったために小学校に入れなかった。宮城県教委は学齢超過者の入学を2011年度に認め、斎藤さんはことし4月から教室に通い始めた。
斎藤さんは話すことができず、不自由な手や表情などで意思表示をする。牛坂教諭は斎藤さんの両親らと相談して、「物作りを通して手を動かす」 「友達や教師と関わりながら、活動を楽しむ」などの1年の目標を立てた。
牛坂教諭は「この半年で手の動きがスムーズになり、自分の考えをしっかりと伝えるようになった」と話す。
斎藤さんと同じ教室で学んでいる佐藤さんの父稔夫さん(81)も娘の成長を実感している。「通学するようになって、人との接
し方が柔らかくなってきた」と目を細める。
宮城県の学齢超過者の特別支援学校就学は40人程度となる見通しで、数年で希望者全員が学ぶことができる。対象者は小学6年を終えた後、中学3年に編入して、計2年間学ぶ。
※重症心身障害者の学齢超過問題
1979年に義務化されたものの、既に学齢期を過ぎていた人は義務教育から取り残された。保護者らの声を受けて、各都道府県
教育委員会はそれぞれの判断で15年以上前に学齢超過者の受け入れを始めた。東北では岩手県教委が2004年度に受け入れを始め、青森県教委も本年度始めた。現在は秋田県教委だけが受け入れていない。義務教育から取り残されたままの障害者はいまだに多数いるとみられるが、国は詳しい実態を把握していない。