浦和駅に「湘南新宿ライン」が全便停車するというので、お祭り騒ぎをしている一方で、川越や飯能、和光市などは横浜の元町・中華街まで直通・乗り換えなしで行けるようになったと大喜びだった。
県西部の東武東上、西武池袋、それに東京メトロ副都心、東急東横、横浜高速鉄道みなとみらいの5路線の乗客が乗り換えなしで埼玉県と横浜市の間を往来できるようになるのだから画期的だった。
東急東横線の渋谷駅のホームが、地上2階から地下5階へ下がり、東京メトロ副都心線(和光市―渋谷)と東急東横線(渋谷―元町・中華街)が「相互直通運転」を始めたおかげである。
例えば、川越―元町・中華街間は、寝ていても1時間半で結ばれるようになった。
念のために和光市駅は、東京メトロ副都心線と有楽町線(和光市―新木場)の埼玉側の始発駅である。
「海なし県」の埼玉では、海と接続するというニュースはいつも大ニュースなのだ。
一昔前、東武東上線が地下鉄の有楽町線で東京の新木場までつながり、「埼玉がついに海(東京湾)に出た」という記事を書いたことをなつかしく思い出す。
だが、県にとってもっと切実な問題は、直通で行けるようになったので、県民が海を、横浜を目指してサイフォン現象のように一方的に出て行くようになるのか、それとも、横浜周辺の神奈川県民が、どれくらい川越や飯能や、余り知られていない和光市までわざわざ来てくれるのか、ということだった。
東急東横線には、自由が丘、田園調布、日吉などブランド力のある駅もある。
知名度は落ちるとはいえ、埼玉県側の川越、飯能、和光市はそれぞれ、横浜市からの観光客を呼び込もうと、活動を始めている。
3市の中では川越が「小江戸川越」でリードしている感じだ。3月30日~5月6日の「小江戸川越春まつり」の観光入り込み客数は全体で約17万6千人。前年比11万近く増え、2.6倍の客足となった。うれしいことに神奈川県からの来訪者が急増している。
14年2月末の発表では、13年の川越市への入り込み観光客は約630万人(前年比1%増)で1982年の統計開始以降で過去最高を更新、神奈川県からの観光客が前年比5.7%増加した、という。
15年2月の発表では、14年は657万7千人と最多を更新した。散策したい歴史ある町並みランキングで全国3位だとか。
奥武蔵野ハイキングが売り物の飯能は「エコツーリズム」で売り出そうとしているし、横浜直通の終点は、武蔵丘陵森林公園(滑川町)になっているのが頼もしい。
さすが国立公園とあって、一度足を運ぶと、季節ごとに行きたくなるところだ。
直通運転は、飯能、森林公園までながら、乗り換えれば、その奥にはまだまだ開発の余地がたぶんにある埼玉県の観光の宝庫「秩父と奥秩父」が広がる。
この冬には、ほとんど知られなかった奥秩父にある荒川源流の岩清水が凍りついた「三十槌(みそつち)の氷柱(つらら)」(秩父市大滝)が脚光を浴び始めた。
ライトアップされた氷の芸術は幻想的で、多くのマイカー族でにぎわった。
春は羊山公園の芝桜に、美の山公園の桜。「埼玉県に桜の名所をつくろう」との発想から秩父市と「秩父音頭」の発祥の地、皆野町にまたがる蓑山(みのやま)に10年かけて約8千本桜を植えたもので、ツツジ、アジサイなども植え、花の名所になっている。
秋には、埼玉県最西端に近い中津峡のモミジの美しさは驚くばかりだ。
東武東上線、秩父鉄道寄りの長瀞は、岩畳や夏の「長瀞ライン下り」で昔からよく知られていて、ジオパークや一つ星ながらミシュランのガイドにも紹介されて、新しい名所作りにも力を入れている。
箱根のように広い湖も温泉もなく(鉱泉が多い)、日光のような歴史的建造物もないものの、秩父の自然にはもっと多くの観光客が訪れてもいい。
今回の直通運転の開始が、秩父を含めた埼玉西部の本格的な観光の夜明けなるように県も自治体も鉄道各社も知恵を絞ってほしい。
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