首都圏を円状にぐるりと結ぶ、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の桶川北本インターチェンジ(IC、桶川市)と白岡菖蒲IC(久喜市)の10.8kmが15年10月31日午後開通、県内区間58.4kmが全線開通した。(地図は朝日新聞による)
開通区間途中にある桶川加納IC(桶川市)と菖蒲パーキングエリア(PA、久喜市)も同時に供用が始まった。圏央道は、都心から半径40~60kmの環状の高速道路。総延長約300km。神奈川県厚木市、東京都八王子市、川越市、茨城県つくば市、千葉県成田市などを経由する。今度の開通で、供用区間は約241kmとなり、全区間の8割が完成した。
関越道と東北道、中央道、東名高速が圏央道経由で都心部を通らず初めて直結、東名から東北道まで首都高経由より約1時間短縮される。久喜白岡ジャンクション(JCT)と東名につながる海老名JCTまで、首都高速経由よりざっと1時間短縮されて、従来の約2時間10分から約1時間15分で行けるようになった。
沿線では物流施設や工場の新設が相次ぎ、観光へのプラス効果など県内経済への波及効果が期待されている。
本県(武蔵国)は古来、道路とともに発展してきた。知事は開通式で「新しい時代が開かれる歴史的な日だ」と述べた。
圏央道沿線地域は最近10年間で462件の企業が進出、1万7774人の雇用が新たに生まれた。
業種別では、製造業が263、流通加工業が124、食料品製造業が52件という順序だ。
県企業局では07年度から久喜市や白岡市に4産業団地(74ha)を造成、23社が進出した。需要に供給が追いつかない状況で、現在造成中の2か所のうち1か所もほぼ予約で埋まったという。
今年度に完成する幸手中央地区産業団地(47ha)には、家具製造販売大手の「ニトリ」(本社・札幌市)や卸売業「トラスコ中山」(同・東京都)の物流センターなど11社の進出が決定。杉戸町の産業団地(24ha)の造成も今春から始まっている。
これに先立ち、菓子メーカーの関東グリコは12年、主力製品のポッキーやプリッツを製造する工場を桶川加納IC近くに新設。建材メーカーのYKKAPも11年、白岡菖蒲ICから約5分の立地に窓専用の工場を稼動させた。
味の素グループは昨年5月、久喜IC近くに物流センターを開設、今年8月には白岡市に化粧品など卸業のパルタックの物流センターが稼動した。
米国系のラサール不動産投資顧問は16~17年に狭山市、日高市に物流施設、シンガポールの物流大手グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)の日本法人は15年末に日高市で同じく物流施設を完成させる。
県内勢も負けていない。県内を中心に店舗展開してきた食品スーパーチェーン・ヤオコー(川越市)は、開通を見込んで10年に平塚や藤沢市の神奈川県に初出店した。
県内全区間開通をきっかけに、県は県外企業誘致をさらに進める考えで、大阪市で立地セミナーを開催する。東日本に進出する企業の拠点となれば、投資や雇用の増加で地域を潤すという算段だ。
観光やレジャー面でも期待が大きい。蔵造りの町並みで有名な川越市の場合、群馬・富岡製糸場と約1時間15分、日光東照宮と約1時間50分、鎌倉市と約1時間50分と所要時間が短縮されるからだ。
時短が実現して便利になった反面、県内のレジャースポットが素通りされてしまう恐れもある。日光や湘南の魅力に勝てるか。
県西部のゴルフ場では、プレー料金が安い栃木や東北などに客が流れることを心配する声もあるという。
圏央道の全区間開通は本県のモノやヒトの動きに大きなインパクトを与えようとしている。17年2月26日には、茨城県内の境古河~つくば中央のIC間が開通、同県内も全区間開通する。圏央道の中心にある埼玉県から関東一円を2時間圏内でカバーできるようになるほか、成田空港へのアクセスも改善するため、観光への影響も期待できそう。
茨城県内の全区間開通で1週間後、埼玉県の桶川加納ー白岡菖蒲IC間は、約18%交通量が増えた。
圏央道沿いの公示地価も上昇、17年1月1日時点での県内の地価は、住宅地、商業地、工業地とも上昇、入間インターチェンジ(IC)周辺の工業地では全国一の上昇率10・3%を記録した。
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