つえをひく事僅に
十歩
杜國
つゝみかねて月とり落す霽かな
こほりふみ行水のいなつま 重五
歯朶の葉を初狩人の矢に負て 野水
北の御門をおしあけの はる 芭蕉
馬糞掻あふきに風の打かすみ 荷兮
茶の湯者おしむ野べの蒲公英 正平
らうたけに物よむ娘かしつきて 重五
燈籠ふたつになさけくらふる 杜國
つゆ萩のすまふ力を撰はれす 芭蕉
蕎麥さへ青し滋賀楽の坊 野水
朝月夜双六うちの旅ねして 杜国
紅花買みちにほとゝきすきく 荷兮
しのふまのわさとて雛を作り居る 野水
命婦の◯より米なんとこす 重五
まかきまて津浪の水にくつれ行 荷兮
佛喰たる魚解き けり 芭蕉
縣ふるはな見次郎と仰かれて 重五
五形菫の 畠六 反 とこく
うれしけに囀る雲雀ちり/\と 芭蕉
真昼の馬のねふたかほ也 野水
おかざきや矢矧の橋のなかよかる 杜國
庄屋のまつをよみて送りぬ 荷兮
捨てし子は柴苅長にのひつらん 野水
晦日をさむく刀賣る年 重五
雪の狂呉の國の笠めつらしき 荷兮
襟に高雄か片袖をとく はせを
あた人と樽を棺に呑ほさん 重五
芥子のひとへに名をこほす禅 杜国
三ケ月の東は暗く鐘の聲 芭蕉
秌湖かすかに琴かへす 者 野水
烹る事をゆるしてはぜを放ける 杜國
聲よき念佛藪をへだつる 荷兮
かけうすき行燈けしに起侘て 野水
おもひかねつも夜るの帯引 重五
こかれ飛たましゐ花のかけに入 荷兮
その望の日を我もおなしく はせを
【初折】
〔表〕
つつみかねてつきとりおとすしぐれかな 杜國(発句 時雨:冬)
こほりふみゆくみづのいなづま 重五(脇 冬)
しだのはをはつかりびとのやにおひて 野水(第三 春)
きたのごもんをおしあけのはる 芭蕉(四句目 春)
ばふんかくあふぎにかぜのうちかすみ 荷兮(五句目 春)
ちやのゆしやおしむのべのたんぽぽ 正平(六句目 春)
〔裏〕
らうたげにものよむむすめかしづきて 重五(初句 雑恋)
とうろふたつになさけくらぶる 杜國(二句目 秋恋)
つゆはぎのすまふちからをえらばれず 芭蕉(三句目 秋)
そばさへあをししがらきのぼう 野水(四句目 秋)
あさづくよすごろくうちのたびねして 杜国(五句目 秋)
べにかふみちにほととぎすきく 荷兮(六句目 夏)
しのぶまのわざとてひなをつくりゐる 野水(七句目 雑)
みやうぶの◯よりこめなんどこす 重五(八句目 雑)
まかきまでつなみのみづにくづれゆき 荷兮(九句目 雑)
ほとけくひたるうをほどきけり 芭蕉(十句目 雑)
あがたふるはなみじらうとあふがれて 重五(十一句目 春花)
げんげすみれのはたろくたん とこく(十二句目 春)
【名残の折】
〔表〕
うれしげにさえずるひばりちりちりと 芭蕉(初句 春)
まひるのうまのねぶたがほなり 野水(二句目 雑)
おかざきややはぎのはしのなかきかな 杜國(三句目 雑)
しやうやのまつをよみておくりぬ 荷兮(四句目 雑)
すてしこはしばかりたけにのびつらん 野水(五句目 雑)
みそかをさむくかたなうるとし 重五(六句目 冬)
ゆきのきやうごのくにのかさめづらしき 荷兮(七句目 冬)
えりにたかをがかたそでをとく ばせを(八句目 雑恋)
あだびととたるをひつぎにのみほさん 重五(九句目 雑恋)
けしのひとへになをこぼすぜん 杜国(十句目 夏)
みかづきのひがしはくらくかねのこゑ 芭蕉(十一句目 秋月)
しうこかすかにことかへすもの 野水(十二句目 秋)
〔裏〕
にることをゆるしてはぜをはなちける 杜國(初句 秋)
こゑよきねんぶつやぶをへだつる 荷兮(二句目 雑)
かげうすきあんどんけしにおきわびて 野水(三句目 雑)
おもひかねつもねるのおびひき 重五(四句目 雑恋)
こがれとぶたましゐはなのかげにいる 荷兮(五句目 春恋花)
そのもちのひをわれもおなじく ばせを(挙句 春)
※らうたげ 可愛らしい
※その望の日を 新古今和歌集巻第十八 切出歌
題しらず 西行
ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ
ねがはくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ
を踏まえる。