新古今増抄(寛文三年板本)
冬
新古今和哥集巻第六
一中納言家持
一かさゝぎのわたせる橋にをく霜の白をみればよぞ更にける
増抄云、かやうの哥は百人一首などの抄にくはしくあり。由略之。人毎に百人一首し
らぬ人の、新古今などみるにはあらずありければなり。然どもかさゝぎのはしとは、天し
の事也。七月七日有事なれば、時節のたがひたるとうたがふ事有り。これは七月七日し
の事なるが空にての事なりければ、則其そらの異名と成也。空に霜がみち/\てしろし
くさゆるをみれば、よりふけたる故ぞとなり。このうた他派の百人一首の五哥の口決し
有事也。
加藤磐斎 寛文三年(1662年)