伊勢物語 四十五段
むかし男ありけり。人のむすめのかしづく、いかでこの男にものいはむと思ひけり。うちいでむことかたくやありけむ、もの病みになりて、死ぬべき時に、「かくこそ思ひしか」といひけるを、親、聞きつけて、泣く泣くつげたりければ、まどひ来たりけれど、死にければ、つれづれとこもりをりけり。時はみなづきのつごもり、いと暑きころほひに、宵は遊びをりて、夜ふけて、やや涼しき風吹きけり。蛍たかく飛びあがる。この男、見ふせりて、
ゆくほたる雲の上までいぬべくは秋風吹くと雁につげこせ
暮れがたき夏のひぐらしながむればそのこととなくものぞ悲しき
国立公文書館 伊勢物語 52頁
平成28年9月11日 伍點七伍
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