九月十日野の山の○しきは
ふかく見しらぬ人だにたゞに
やはおぼゆる。山風にたへぬる
木々の梢もみねの葛葉も
○あはたゞしうあらそひちる
まぎれにたうときどきやうの
○○かすかに念佛などの
こ○ばかりして人のけはひ
いとすくなし
源氏物語 夕霧(青表紙大島本)
九月十余日、山のけしきは
深く、見知らぬ人だに、ただに
やはおぼゆる。山風に堪へぬ
木々の梢も、峰の葛葉も、
心あはただしう争ひ散る
紛れに、尊き読経の
声かすかに、念仏などの
声ばかりして、人のけはひ
いと少なう、
(木枯の吹き払ひたるに、鹿はただ籬のもとにたたずみつつ、山田の引板にもおどろかず、色濃き稲どもの中に混じりてうち鳴くも、愁へ顔なり。)
源氏物語大成によれば、
「九月十よ日」を「十日」と書く写本は無い。
「野の山の気色」は、河内本、別本とも「野山の」と有るが、青表紙本は「山の」となっていて、何れとも違う。
「念仏などの」は、河内本、別本は「念仏僧の」となっている。
「少なし」は、全ての写本で「少なう」と木枯しに続く。これは色紙の終りを終止形で切りたかったのでは?と思う。
平成30年9月11日 壱/八枚
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