新古今和歌集の部屋

歌論 無名抄 上句劣秀歌事



俊惠云、
歌は秀句を思ひ得たれど、本、末いひ適ふる事の難きなり。後大寺左府の御哥に

なごの海の霞の間より眺むれば入日を洗ふ沖つ白波
(春歌上 35 後徳大寺左大臣)

頼政卿哥に、
住吉の松の木間より眺むれば月落ちかゝる淡路嶋山
(歌枕名寄、頼政集)

此兩首、共に上句思ふやうならぬ哥なり。『入日を洗ふ』といひ、『月落ちかゝる』などいへる、いみじき詞なれど、胸腰の句をえいひ適えず、遺恨の事也。


○俊惠
(1113年~?)源俊頼の子。東大寺の歌林苑の月次、臨時の歌会を主催。鴨長明は弟子にあたる。
○後大寺左府
藤原実定(1139~1191年)公能の子。詩、管弦も優れる。
○頼政
源頼政(1104~1180年)源三位入道とも称された武将で平治の乱には平清盛につき、後に以仁王を奉じて挙兵するが、宇治で敗死。鵺(ぬえ)退治で有名。

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