新古今和歌集の部屋

増鏡 第二 新島守 都よりの消息

たとへしなくながめしをれさせ給へる夕暮に、沖の方にいと小さきこの葉の浮かべると見えて漕ぎくるを、あまのつりぶねと御覽ずる程に、都よりの御せうそこなりけり。

すみぞめのおんぞ、夜の御ふすまなど、都の夜寒に思ひやり聞こえさせ給ひて、七條院より參れる御ふみひきあけさせ給ふより、いといみじく御胸もせきあぐる心地すれば、やゝためらひて見給ふに、

あさましく、かくて月日へにけること。今日明日とも知らぬ命の内に、今一たびいかでみたてまつりてしがな。かくながらは死出の山路も越えやるべうも侍らでなん

など、いと多く亂れ書き給へるを、御顏に押し当てゝ

たらちねのきえやらで待つ露の身を風より先にいかでとはまし

やほよろづ神もあはれめたらちねのわれ待ちえんと絶えぬ玉のを


※海人の釣り舟

わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人のつり舟 小野篁 古今集

※死出の山路

昨日まてちよとちきりし君をわかしての山ちにたつぬへきかな 藤原師輔 後撰集

さりともとなほ逢ふことを頼むかな死出の山路を越えぬ別は 西行法師 新古今

※たらちねの 後鳥羽院が出雲の大浜湊から七条院へ送った歌と吾妻鏡にある。

八重にほふ軒端の櫻うつろひぬ風よりさきに訪ふ人もがな 式子内親王 

※絶えぬ玉の緒

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする 式子内親王

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「物語」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事