表面
すこしことはりかなひて聞え侍らむ。左しもの句も
ゆふに侍にや
八百三十一番
左 季能卿
けさはまたしぐれそめけりきのふまで秋のあはれにぬれし袂を
右 三宮
冬きぬるけしきのもりのむらしぐれそめし木葉を又さそひけり
秋のあはれにぬれしたもとすこしよはくやきこえ
侍らむ。おほかたはちかき世よりの哥にぞことごゝろと
なくそでぬるゝことはおほく侍にや
裏面
けしきのもりのしぐれそめし木の葉を又さそふも
ことはり聞え侍らむ。
八百三十二番
左 宮内卿
きのふこそながめし秋もくれはどりあやにくなれ(り)やさゆるよの風
右 内大臣
なにとかやみねなるかねよ霜をけば冬にやこよひなりはじむ覧
左夜風右冬霜共無指難。可謂同科歟。
八百三十三番
左 讃岐
建仁二年(1202)9月2日後鳥羽院より30名の歌人に百首歌を奉じさせ、75首を一巻として、一人二巻、十人の判者に判じさせ、翌年3月完成したペーパー上の歌合。判者は、春1,2を忠良、春3,4を俊成、夏1,2を通親、夏3,秋1を良経、秋2,3を後鳥羽、秋4,冬1を定家、冬2,3を季経、祝,恋1を師光、恋2,3を顕昭、雑1,2を慈円とした。通親は途中10月21日没したため、関係部分は未完。
※けしきの森 気色の杜で大隈の歌枕。大隈国国府、鹿児島県霧島市国分府中町付近の森。景色、気色と掛けられる。
※くれはどり 呉織/呉服。応神天皇期、渡来した織工女。彼女らがもたらした技術で織った絹織物を言う。美しい綾のあるところから、「あや」「あやに」「あやし」にかかる枕詞。