伊勢物語繪詞 む さしの は けふは なやきそ 若艸の 妻も篭れり われもこもれり 武蔵野 むかし、をとこありけり。人のむすめをぬすみて、武蔵野へ率て行くほどに、ぬす人なりければ、国の守にからめられにけり。女をば草むらの中におきて、逃げにけり。道来る人、この野はぬす人あなりとて、火つけむとす。女、わびて、 武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり とよみけるをきゝて、女をばとりて、ともに率ていにけり。