新古今和歌集の部屋

平家物語 屋代本 元暦大地震

巻第十二
元暦二年七月九日大地震事


上下安堵シテ思程ニ同七月九日ノ午(ノ)剋

斗ニ大地震(ヲヒタヽ)シク動(ウコ)イテ良久シ怖(ヲソロ)シナントモ愚(カ)也。赤【縣】中

白河邊(ン)六勝寺九重(ノ)塔(タウ)ヲ初テ或ハ倒(タウレ)臥(シ)、或ハ破(ヤフ)レ崩(クツ)ル


在々所々神社佛閣皇居(キヨ)民屋全(マツタ)キハ一宇(ウ)モナシ。上カル

塵ハ煙(リ)ノ如シ。崩(クツル)ル音ハ雷(イカツチ)ニ似リ。天闇(クラ)クシテ日ノ光モ不(ス)見(ヘ)老少

共ニ魂(タマシイ)ヲ消(ケ)シ鳥獣悉(コト/\)ク心ヲ迷(マト)ハス。遠國近國モ又如(シ)此。山

崩(クツレ)テ河ヲ埋(ウツ)ミ、海傾(カタフヒ)テ濱(ハマ)ヲ浸(ヒタ)ス。興(オキ)漕(コク)舟ハ浪ニ漂(タヽヨ)ヒ、陸(クカ)行

駒(コマ)ハ足(アシ)ノ立所ヲ迷(マヨ)ハス。大地割(サケ)テ水涌(ハキ)出ツ。岩(キシ)ワレテ谷ヘマロフ

洪(コウ)水漲(ミナギリ)來(キタラ)ハ岳(ヲカ)ニ登(ノホリ)テモ、ナトカハ可キ不ル助(タスケ)、猛(ミヤウ)火燃ヘ來(キタラ)ハ河ヲ

隔(ヘタテ)テモ暫(シハシ)ハ可(シ)去ヌ。又非(アラサレハ)鳥に空(ソラ)ヲモ不翅(カケラ)、非龍ニ子ハ雲ニモ

難シ入リ。只悲(カナシ) カリケルハ大地震(シン)也。四大種ノ中(ウチ)ニ水火風ハ)常(ツ子)ニ


害(カイ)ヲ成(セ)共、猶(ナヲ)大地ハ異(コト)ナル變ヲ成ス。

…略…

 


文徳天皇ノ御時齊衡(サイコウ)

三季三月十三日ノ大地震ニハ東大寺佛ノ御クシ落タリ

ケルトソ承ル。


【縣】縣に石

屋代本平家物語 角川書店 貴重古典籍叢刊 9  国学院大学図書館蔵

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