百人一首抄 宗祇 山邊赤人 田子の浦に打出て見れば白妙の冨士の高根に雪は降つゝ 此浦は、磯かつれふかければ、立出ずしては見えぬ山也。 冨士は、つねに雪きえぬ所なれば、白妙なる上に、又、 ろう/\とくもりて、雪の降たる景気、言語道断 の所を、ともかくもいはずして、つゝいひ残したるなり。 あたりの山つえが磯、みほの松原、浮嶋が原など いはむとすれば、哥のもしに限あるによりて、つゝといへる。 又、時刻をうつして、ながめたる心もありとぞ。