兼載雑談
一、下句は一ふしあるがよきなり。下の句の内に二ふしあ
る時は、付けにくし。風もいづくの舎とふらむなどやうに
すべし。もの字にて、人の宿をとひたる心あり。
一、秀能は、五位にて官位もなきものなれども、歌上手な
れば叡慮にもよろしとなり。秀能なき座は歌おもしろ
からずと、常に勅定給ひしとなり。
一、俊成卿、基俊に歌の事尋ね給ひしに、枯野の薄、
有明の月のやうにと答へ給ひしは、すごく心ぼそき
やうにとなり。
一、詠むれば心もそれになりにけり枯野の薄有明の月
三日の夜は月も冬野の薄かな 載