一 かきねの梅をよみ侍ける 藤原ノ敦家ノ朝臣
故者本藏人頭。參儀兼經ー。母ハ中納言隆
家女 一首入。
一 あるじをば誰共わかず春はたゞ垣ねの梅を尋てぞみる
増抄云。詩の心なり。わかずとは分て吟味も
なくをしなべてと云義也。たゞとはよの事
なしにと也。梅さへあればとあんり。垣ねといふ
を居所なれば、人家と用たるべし。人家
をみてといへるにだづぬるこゝろあり。
頭注
朗詠遙ニ
見人家有花
則入不論貴賤
与親疎
※參儀兼經ー 參議兼經一男の誤字。
※朗詠
和漢朗詠集 花 尋春題諸家園林 白居易
遙見人家花便入不論貴賤与親疎
遙に人家を見て花あれば便ち入、貴賤と親疎とを論ぜず
ただし、北村季吟は八代集抄において、新撰朗詠集 春興 紀斉名を本文としている。
「新撰朗詠紀斉名至 無定家尋花而不問主 この心を用るにや」