やりくれて又 やさむしろ歳の暮 其角
いね/\と 人にいはれつ年の暮 路通
としの暮 破れ袴 の 幾くたり 杉風
夏
有明 の 面おこすやほとゝきす 其角
夏かすみ 曇り行方や 時鳥 木節
野を横に 馬引むけよほとゝきす 芭蕉
時鳥けふに限りて 誰 もな し 尚白
ほとゝきす何もなき野の 門 構 凡兆
昼迄は さのみいそかす 郭 公 智月
蜀䰟 なくや 木の間の 角 櫓 史邦
入相の ひゝきの中やほとゝきす 羽紅
ほとゝきす瀧よりかみのわたりかな 丈草
心なき 代官 殿や ほとゝきす 去来
遊女
こひ死は 我塚てな け 時 鳥 奥刕
松嶋一見の時千鳥もかるや
鶴の毛衣とよめりけれは
松嶋や 鶴に身をかれほとゝきす 曽良
うき我をさひしからせよかんこ鳥 芭蕉
旅館庭せはく庭草を見す
膳所
若楓茶いろになるも一さかり 曲水
四月八日詣慈母墓
花水にうつし かへたる 茂り哉 其角
江戸
葉かくれぬ花を 牡丹の姿かな 全峯
別僧
ちるときの 心安さよ けしの花 越人
智恵のある人には見せしけしの花 珎碩
翁に供られてすまあかしに
わたりて
亡人
似合しき けしの一重や須厂の里 杜國
青くさ き 匂もゆかしけしの花 嵐蘭
井のすゑに 浅/\ 清し 杜若 半残
起出て物にまきれぬ朝の間の
起/\の 心うこかすかきつはた 仙化
題去来之嵯峨落柿舎二句
やりくれてまたやさむしろとしのくれ 其角(歳暮:冬)
いねいねとひとにいはれつとしのくれ 路通(歳暮:冬)
としのくれやぶればかまのいくくだり 杉風(歳暮:冬)
※くだり 領/襲[接尾]助数詞。衣装や幕・蚊帳などを数えるのに用いる。そろい。
夏
ありあけのおもておこすやほととぎす 其角(時鳥:夏)
※千載集夏 御徳大寺左大臣
時鳥鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる
なつがすみくもりゆくゑやほととぎす 木節(時鳥:夏)
のをよこにむまひきむけよほととぎす 芭蕉(時鳥:夏)
※奥の細道
ほととぎすなにもなきののもんがまへ 凡兆(時鳥:夏)
ひるまではさのみいそがずほととぎす 智月(時鳥:夏)
ほととぎすなくやこのまのすみやぐら 史邦(時鳥:夏)
いりあひのひびきのなかのほととぎす 羽紅(時鳥:夏)
ほととぎすたきよりかみのわたりかな 丈草(時鳥:夏)
こころなきだいくわんどのやほととぎす 去来(時鳥:夏)
こひしなばわがつかでなけほととぎす 奥州(時鳥:夏)
※万葉集巻第十五 中臣守宅
恋ひ死なば恋ひも死ねとやほととぎす物思ふ時に来鳴きとよむる
まつしまやつるにみをかれほととぎす 曽良(時鳥:夏)
※奥の細道
うきわれをさびしがらせよかんこどり 芭蕉(閑古鳥:夏)
※山家集 西行
とふ人もおもひたえたる山ざとのさびしさなくはすみうからまし
※嵯峨日記
わかかへでちやいろになるもひとさかり 曲水(若楓:夏)
はなみづにうつしかへたるしげりかな 其角(茂り:夏)
はがくれぬはなをぼたんのすがたかな 全峯(牡丹:夏)
ちるときのこころやすさよけしのはな 越人(芥子花:夏)
ちゑのあるひとにはみせじけしのはな 珎碩(芥子花:夏)
にあはしきけしのひとへやすまのさと 杜国(芥子:夏)
あをくさきにほひもゆかしけしのはな 嵐蘭(芥子花:夏)
ゐのすゑにあさあさきよしかきつばた 半残(杜若:夏)
おきおきのこころうごかすかきつばた 仙花(杜若:夏)