伊賀
腥き はな 最中の ゆふへ かな 長眉
花も奥有とやよしのに深く吟し入て
大峯や よし のゝ奥の 花の 果 曽良
道灌山に登る
道灌や 花は その代も 嵐 かな 嵐蘭
源氏の繪を見て
欄干 に 夜ちる 花 の立すかた 羽紅
庚午の歳家を焼て
加刕
焼にけり されとも花はちりすまし 北枝
はなちるや 伽藍 の枢 おとし行 凡兆
江戸
海堂の 花は 満たり よる の月 普舩
大和行脚のとき
草 臥て 宿かる比や 藤 の 花 芭蕉
山鳥や 躑躅 よけ行 尾のひねり 探丸
やまつゝし 海に見よとや 夕日影 智月
兎角して 卯花 つほむ 弥生 哉 山川
伊賀
鷽 の聲 きゝそめて より山路哉 式之
木曽塚
其春の 石ともならす 木曽の 馬 乙刕
春の夜はたれか 初 瀬の 堂 籠 曽良
望湖水惜春
行 春を 近江の人と をしみける 芭蕉
なまぐさきはなさいちゆうのゆふべかな 長眉(花:春)
吉野山
おほみねやよしののおくのはなのはて 曽良(花:春)
※花も奥ある 続古今和歌集 春歌上
花の歌とて 後鳥羽院宮内卿 (建仁元年仙洞句題五十首)
見渡せば麓ばかりに咲きそめて花も奥あるみ吉野の山
※よしのに深く 曽良日記によると元禄四年四月一日に吉野で観桜。
だうかんやはなはそのよをあらしかな 嵐蘭(花:春)
らんかんによるちるはなのたちすがた 羽紅(花:春)
やけにけりされどもはなはちりすまし 北枝(花散:春)
三井寺
はなちるやがらんのくるるおとしゆく 凡兆(花散:春)
※はなちるや
新古今和歌集巻第二 春歌下
山里にまかりてよみ侍りける
能因法師
山里の春の夕ぐれ来て見ればいりあひのかねに花ぞ散りける
よみ:やまざとのはるのゆうぐれきてみればいりあいのかねにはなぞちりける 定隆雅 隠
意味:山里に春の夕暮れ時桜を見に来てみれば、夕日が沈む時を告げる鐘が響き渡って、その音に誘われるように花が散っていました。
※枢 戸締まりをするために、戸の桟(さん)から敷居に差しこんで栓をする木片。また、そのしかけ。おとし。くるりぎ。くるるぎ。猿(さる)。暮るるの掛詞。
かいどうのはなはみちたりよるのつき 普舩(海堂の花:春)
耳成山
くたびれてやどかるころやふじのはな 芭蕉(藤の花:春)
※大和行脚 天理市の布留神社を詣で、八木の耳成山の東の宿に泊まった時の書簡。
やまどりやつつじよけゆくおのひねり 探丸(躑躅:春)
やまつつじうみにみよとやゆふひかげ 智月(躑躅:春)
とかくしてうのはなつぼむやよいかな 山川(弥生:春)
うそのこゑききそめてよりやまぢかな 式之(鷽:春)
そのはるのいしともならずきそのむま 乙州(春:春)
はるのよはたれかはつせのだうごもり 曽良(春の夜:春)
ゆくはるをあふみのひととをしみける 芭蕉(行く春:春)