清輔弘才事
勝命云清輔朝臣哥のかたの弘才はかたならぶ人
なし。いまだよもみおよばれじとおぼゆることをわざい
とかまへてもとめいでゝたづぬればみなもとよりさ
たしふるされたることゞもにてなん侍し。はれの
哥よまんとては大事はいかにも古集をみてこそと
いひて万葉集をぞかへす/"\みられ侍し。
清輔弘才事
勝命云、「清輔朝臣、歌の方の弘才は肩並ぶ人なし。未だよも見
及ばれじと覚ゆる事をわざと構へて求め出て尋ぬれば、みなもと
より沙汰し古されたる事どもにてなん侍し。晴の歌よまんとては、
『大事はいかにも古集を見てこそ』といひて、万葉集をぞかへす
がえす見られ侍し。」
※構へて
設けて。考え出して。
※もとより沙汰し
とうの昔に検討して