喜撰が跡
又みむろとのおくに廿よ丁ばかり山中へ入て
うぢ山のきせがすみけるあとあり。いへはなけれど
たうの石ずゑなどさだかにあり。これらかならず
たづねてみるべきなり。
◯喜撰
平安初期の僧。六歌仙。
小倉山百人一首全
㐂撰法師
我いほは
都の
たつみ
しかぞ
すむ
世をうぢ
山と
人はいふなり
◯喜撰法師
哥式を作る同人と
云云。一説基泉同人
と云。又別人とも云。
鴨長明無名抄ニ云
三室戸の奥に二十
餘町ばかり山中へ入て
宇治山の喜撰が住
をる跡あり家はな
けれども石塔など
のさだかに侍なり。
是を見べしと云云。
元亨釋書十八神
仙傳に釋窺仙居
宇治山持密咒兼
て求長生辟穀服
餅一且乗雲去云云
喜撰窺仙同人
にや。
此哥の心はきせんほうし都の巽うぢ
山に庵をしめてすめり。人はよをう
ち山といへとも我はたのみてかくの
ごとく心よく住といへり。都のたつみとは
方角をさして云り。古今序にも
始をはりたしかならずといへる。よをうぢ
山と人はいへ共と云べきを人はいふなり
といいへる所をさしえいへり。又秋の月を
見るに曙の雲にあへるがごとしと云
ことはよおすがらはれたる月の俄に
雲のかゝりたるをば始終たしかならず
といへり。
◯季注に三間藁屋従来往一道
神光萬境間莫把是非来辨
我浮生穿鑿不相関