新古今和歌集の部屋

うすくこき 宮内卿の歿年7 宮内卿歿年の推定

8 宮内卿歿年の推定
(1)具親の活動
石田吉貞が、指摘しているように、家族の死去は、穢となり、禁忌の期間が設けられる。
そこで、源具親の活動を建仁三年から建永三年までの活動記録を明月記、歌会等参加記録で見ると、以下の通りである。

建仁三年(1203年)
 一月十五日 高陽院殿初度歌会
 二月十七日 普賢延命結願馬引
 二月二十四日 大内花見
 三月四日 女院御所二献瓶子役
 四月二十三日 使勧杯瓶子役
 五月十五日 堂童子役
 六月十六日 和歌所影供歌合、当座歌合
 七月五日 八幡若宮撰歌合
 八月一日 九条家詩歌合
 八月十五日 俊成九十賀屏風歌会、あきのつき五首当座歌
 九月十三日 日没後院に参ず
 十一月二十三日 俊成九十賀、当座歌
 十二月十四日 日吉社御幸供奉
元久元年(1204)
 一月十四日 北政所御堂入供奉
 四月十六日 葵祭瓶子役
 七月十六日 宇治御幸当座御会 参加不明
 八月十五日 五辻殿初度十五夜御会、当座歌会
 十月二十九日 岩清水八幡若宮当座歌合 欠
 十一月十日 春日社歌合
 十一月十一日 北野宮歌合 欠
 十二月 後鳥羽院熊野御幸供奉 切目王子歌会
元久二年(1205年)
 二月二十日 院にて日臈、沙汰
 二月二十二日 切継手伝い
 三月十八日 切入手伝い
 三月二十六日 新古今和歌集竟宴
 三月二十七日 昨日竟宴出席
 四月十日 除目少将
 四月十九日 夕定家宅訪問
 四月二十九日 元久詩歌合参加者決定
 六月十五日 元久詩歌合
 七月二十八日 梅島見物
 七月十八日 北野社祈雨歌合 欠
 閏七月二十九日 夜定家宅訪問
 十月八日 定家車同乗
 十月十一日 良経御移徒車献
元久三年(建永元年)(1206年)
 一月十一日 高陽院歌会
 六月二十九日 定家と小御所名謁
 七月十三日 和歌所で住吉願書打合
 七月十七日 定家と二条少将宅訪問
 七月十八日 歌進入
 七月二十日 名謁
 七月二十五日 卿相侍臣歌合、当座歌合
 七月二十八日 歌詠進
 七月二十九日 新古今を見る
 八月九日 連歌を見る
 八月十日 有心無心
 八月十一日 有心無心歌合
 八月十五日 鳥羽院南殿新月歌会
 八月十九日 久我亭月見
 八月二十四日 弘御所寝る
 九月二日 俄連歌
 十一月二十八日 慈円報恩会歌会
 十二月五日 仏名
建永二年(承元元年)
 一月二日 賀礼
 一月三日 院列立(染め分け)
 一月九日 南山精進屋御幸供奉
 一月二十一日 明日年始御会。
 二月十七日 新大納言拝賀扈従
 三月七日 御幸供奉
 三月二十八日 定家訪問。姫の前の産後。
 五月五日 最勝四天王院障子和歌の詠者内定
 八月二十七日 定家帰京中、道で遇う。
 十一月二十一日 承明門院大般若御読経結願具親催す。

(2)師光の死去年
師光の死去については、歌会に出席しなくなった元久元年頃と言われている。日本文学大年表(市古貞次ほか)は、建仁三年頃としている。
しかしながら、石田吉貞も指摘しているように、父母、親族が死去すると、禁忌として、出仕が止められる。
事実、定家は、俊成が亡くなったので、新古今集部類編纂を止め、新古今集の完成を急いだ後鳥羽院より、わずか3ヶ月弱の二月で禁忌を解除されたが、自身は頑なに新古今和歌集竟宴、元久詩歌合の公式行事を拒み、神祇部へは、畏れ多いと閲覧すら拒んでいる。天皇家の穢への恐れには、度々明月記に行事中止等とともに伝えている。
具親にとっては、父師光が死去した場合、天皇への大穢から公式行事に参加は出来ない。
この前提で元久元年の具親参加行事を見ると、四月の葵祭、十二月の後鳥羽院の熊野御幸と神事に参加している。大穢に触れた者は、決して参加出来ない。ましてや、葵祭の功により少将に昇格している。
そして、明月記によると八月十五日の和歌所に後鳥羽院とともに参加して当座「あきのつき」歌を詠進している。
かなりの期間、禁忌にある者の活動記録とは言えない。
明月記の二月二十八日に右京権大夫入道が昨日死去とある。しかし、これは藤原隆信の事とされている。ただし、これを師光とすると今度は、息子の具親は新古今和歌集竟宴に参加しており、大穢の身分で参加は出来ない矛盾が生じる。
明月記建仁三年九月十三日には、疑問を生じる「具親同じく参ず。世間を憚りて、其の沙汰無し。」がある。世間を憚るとは何かを記載されていない。しかし、家長日記の十一月二十三日の和歌所で開催された俊成九十賀には、出席し、「君が経む千歳の坂を待つ人の鳩の杖をばつくにぞ有りける」と言う歌を献じている。死後2ヶ月で式典に出席が許されるものでは無い。
もしかすると、源氏物語の明石の入道の様に、自分の死期を悟り、具親の和歌所寄人に歌人としての期待を掛け、遠い山奥へ引っ込んだかも知れない。こうなると死んだのか生きているのか不明で、穢で周りから咎められる事も無い。
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