高き屋にのぼりて見れば煙たつ民のかまどはにぎはひにけり
708 よみ人知らず
はつ春のはつねの今日の玉菷手にとるからにゆらぐ玉の緒
709 藤原清正
子の日してしめつる野辺の姫小松ひかでや千代のかげを待たまし
710 紀貫之
君が世の年のかずをばしろたへの浜の真砂とたれかしきけむ
711 紀貫之
若菜生ふる野辺といふ野辺を君がため万代しめて摘まむとぞ思ふ
712 紀貫之
木綿だすき千年をかけてあしびきの山藍の色はかはらざりけり
713 土御門右大臣
君が世に逢ふべき春の多ければ散るとも桜あくまでぞ見む
714 伊勢
住の江の浜の真砂をふむ鶴はひさしきあとをとむるなりけり
715 紀貫之
年ごとに生ひそふ竹のよよを経てかはらぬ色を誰とかは見む
716 凡河内躬恒
千歳経るをのへの松は秋風のこゑこそかはれ色はかはらず
717 藤原興風 ○
山川の菊のしたみづいかなればながれて人の老をせくらむ
718 紀貫之 ○
祈りつつなほなが月の菊の花いづれの秋か植ゑて見ざらむ
719 皇太后宮大夫俊成 ○
やまびとの折る袖匂ふ菊の露うちはらふにも千世は経ぬべし
720 清原元輔 ○
神無月もみぢも知らぬ常磐木によろづ代かかれ峰の白雲
721 伊勢
山風は吹けど吹かねどしら浪の寄する岩ねは久しかりけり
722 紫式部
曇なく千年にすめる水の面にやどれる月の影ものどけし
723 伊勢大輔 ○
池水のよよに久しく澄みぬればそこの玉藻もひかり見えけり
724 六条右大臣
君が代の千歳のかずもかぎりなく曇らぬ空の光にぞ見る
725 前大納言隆国
住の江に生ひそふ松の枝ごとに君が千歳の数ぞこもれる
726 康資王母 ○
万代をまつの尾山のかげしげみ君をぞ祈るときはかきはに
727 大弐三位 ○
相生の小塩の山のこ松原いまより千代のかげを待たなむ
728 大納言経信
子の日する御垣の内の小松ばら千代をば外の物とやは見る
729 権中納言通俊
子の日する野辺の小松を移し植ゑて年のを長く君ぞ引くべき
730 前中納言匡房 ○
君が代は久しかるべきわたらひや五十鈴の川の流絶えせで
731 よみ人知らず
常磐なる松にかかれる苔なれば年の緒ながきしるしとぞ思ふ
732 刑部卿範兼
君が世に逢へるは誰も嬉しきを花は色にも出でにけるかな
733 参河内侍
身にかへて花も惜しまじ君が代に見るべき春の限りなければ
734 式子内親王
天の下めぐむ草木のめもはるにかぎりも知らぬ御世の末々
735 摂政太政大臣
おしなべて木のめもはるの浅緑松にぞ千世の色はこもれる
736 摂政太政大臣 ○
敷島ややまとしまねも神代より君がためとやかため置きけむ
737 摂政太政大臣 ○
濡れてほす玉ぐしの葉の露霜に天照るひかり幾世経ぬらむ
738 皇太后宮大夫俊成 ○
君が代は千代ともささじ天の戸やいづる月日の限なければ
739 藤原定家朝臣
わが道を守らば君を守らなむよはひはゆづれすみよしの松
740 寂蓮法師 ○
高砂の松もむかしになりぬべしなほゆく末は秋の夜の月
741 源家長
もしほ草かくとも尽きじ君が代の数によみ置く和歌の浦波
742 前大納言隆房 ○
嬉しさやかたしく袖につつむらむ今日待ちえたる宇治の橋姫
743 藤原清輔朝臣
年経たる宇治の橋守こととはむ幾代になりぬ水のみなかみ
744 藤原清輔朝臣
七十ぢにみつの浜松老いぬれど千代の残りはなほぞはるけき
745 後徳大寺左大臣
八百日ゆく浜の真砂を君が代のかずにとらなむ沖つ嶋もり
746 摂政太政大臣
春日山みやこの南しかぞおもふ北の藤なみ春にあへとは
747 よみ人知らず ○
常磐なる吉備の中山おしなべて千歳をまつのふかき色かな
748 祭主輔親 ○
あかねさす朝日のさとの日影草豐のあかりのかざしなるべし
749 式部大輔資業 ○
すべらぎを常磐かきはにもる山のやま人ならし山かづらせり
750 前中納言匡房 ○
とやかへるたかの尾山の玉椿霜をば経とも色はかはらじ
751 宮内卿永範 ○
曇なきかがみの山の月を見て明らけき世を空に知るかな
752 刑部卿範兼 ○
大江山越えていく野の末とほみ道ある世にも逢ひにけるかな
753 皇太后宮大夫俊成 ○
近江のや坂田の稲をかけつみて道ある御世のはじめにぞつく
754 権中納言兼光
神代より今日のためとや八束穂に長田の稲のしなひそめけむ
755 式部大輔光範
立ちよれば涼しかりけり水鳥の青羽の山のまつのゆふかぜ
756 権中納言資実
常磐なる松井の水をむすぶ手の雫ごとにぞ千代は見えける
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