春の日
夏
ほとゝきすその山鳥の尾は長し 九白
郭公さゆのみ焼てぬる夜哉 李風
かつこ鳥板屋の背戸の一里塚 越人
うれしさは葉かくれ梅の一つ哉 杜國
若竹のうらふみたるゝ雀かな 亀洞
傘をたゝまで蛍みな夜哉 舟泉
武蔵坊をとふらふ
すゞかけやしてゆく空の衣川 商露
夏
ほととぎすそのやまどりのおはながし 九白(時鳥:夏)
ほととぎすさゆのみたきてぬるよかな 李風(時鳥:夏)
かつこどりいたやのせとのいちりづか 越人(郭公、閑古鳥:夏)
うれしさははがくれうめのひとつかな 杜國(梅の実:夏)
わかたけのうらふみたるるすずめかな 亀洞(若竹:夏)
からかさをたたまでほたるみなよかな 舟泉(蛍:夏)
武蔵坊をとぶらふ
すずかけやしでゆくそらのころもがわ 商露(すずかけ:夏)
※その山鳥
新古今和歌集巻第三 夏歌
葵をよめる 小侍從
いかなればそのかみ山のあふひ草年は經れども二葉なるらむ
新古今和歌集巻第十六 雜歌上
いつきの昔を思ひ出でて 式子内親王
ほととぎすそのかみ山の旅枕ほのかたらひし空ぞわすれぬ
拾遺集巻第十三 恋歌三 題知らず 人麿
葦引の山鳥の尾のしたりをのなかなかし夜をひとりかもねむ
※さゆのみ 白湯を沸かしてお茶を飲んでほととぎすを待とうしていたがと言う意味。
※すずかけ 鈴懸草。山伏が着る法衣篠(鈴)懸の意味を兼る。現代のスズカケノキ(プラタナス属など)季語:春やコデマリとは違う。