或人云 業平朝臣、二條后の未だたゝ人にておはしましける時、盗み取りて行きけるを、兄人達に取返されたる由いへり。此事又日本紀にあり。事の樣はかの物語にいへるがごとくなるにとり...

或人云、 橘爲仲陸奧國の守にて下りける時、五月五日家毎に菰を葺きければ、怪しみて是を問...

哥には故實の躰と云ふ事あり。きと風情を思ひ得ぬ時は、心の工みにて作りたつべきさまを習...

幼きなき初元結に長き世を契る心は結びこめつや 読み いときなきはつもとゆひにながきよをち...

俊惠云 世の常のよき哥は堅文の織物のごとし。よく艶優れぬる哥は浮文の織物を見るがごと...

或人問云この比の人の哥ざま、二面に分かれたり。中比の躰を執する人は今の世の哥をばすゝろ...

御所に朝夕候ひし比、常にも似ず珍しき御會ありき。 六首の哥に皆姿をよみかへて奉れ と...

今の御代には、俊成卿女と聞ゆる人、宮内卿、この二人ぞ昔に恥じぬ上手共成りける。哥のよ...

近く女哥よみの上手にては、大輔、小侍從とてとり／＼にいはれ侍き。大輔は今少し物など知...

近頃隆信、定長と番ひて若くより人の口に同じ樣にいはれ侍き。彼の俊惠が家にて百首を十...