前田家本方丈記 日野の庵15 世を知れらば願はず、走らず、ただ静なるを望みとし
をしれらはねかはすはしらすた たしつかなるをのそみとし うれへなきをたのしみとす。 すへて世の人のすみかをつくる ならひかならすしも身のために せす。あるひは妻子眷属のた...
前田家本方丈記 日野の庵16 我今身のために結べり
これをつくる。われいまみの ためにむすへり。人のために つくらさる。ゆへいかにとなれは いまのよのならひこの身のあり さまともなふへきやつこもな し。たとひ広くつくれりと...
前田家本方丈記 富めるを尊み1 懇ろなるを先とす
なるをさきとす。かならすしも なさけあるとすなをなるとを はあいせす。たゝ紫竹花月をと もとするにはしかす。人のやつ こたるは賞罰はなはたしく 恩顧あつきをさきとす。さら...
前田家本方丈記 富めるを尊み2 如何我が身を奴婢とする
す。いかゝわか身をとするとなら は若なすへき事あれはすなは ちおのか身をつかふ。たゆからすし もあらねとひとをしたかへひとを かへりみるよりはやすし。若ある くことあれは...
前田家本方丈記 富めるを尊み3 今、一身を分かちて
つの用をなす。てのやつこあし のゝりものよくわか身にかなへり。 こころ身のくるしさをしれゝ はくるしき時はやすめつまめ なれはつかふ。つかふといへとも たひ/\すくさす。...
前田家本方丈記 富めるを尊み4 何ぞ徒に易くおらん
なるへし。なんそいたつらに やすくおらん。ひとをくるしめ人 をなやますははた罪業なり。...
前田家本方丈記 富めるを尊み5 姿を恥づる悔いもなし
されはすかたをはつるくひもな しかてともしけれはおろそかな れともほゝをあまくす。すへて かやうのたのしみ人にたいし ていふにはあらす。わか身ひとつに とりてむかしといま...
前田家本方丈記 其れ三界は只心一つ 宮殿楼閣の望みなし
宮殿楼閣ものそみなし。いまさ ひしきすまひひとまのいほり みつからこれをあひす。をのつから みやこにいてゝ乞匂となれるこ とをはつといへともかへりてこゝ におるとき他の俗...
前田家本方丈記 抑も一期の月傾きて1 仏の人を教へ給ふ趣は
ほとけの人をおしへ給おもむ きはことにふれて執心なかれと なり。いま草庵を愛するもと かとす。閑寂に着するもさはり なるへし。いかゞようなきたのし みをのへてむなしくあた...
前田家本方丈記 抑も一期の月傾きて2 世を逃れて山林に交はる
のかれて山林にましはるは心を しつめみちをおこなはんかた めなり。しかあるをなんそす かたはひしりにてこゝろはにこり にしめり。すみかはすなはち浄 名居士のあとをけかせり...