
20年前の話です。
仕事から帰宅すると、留守番電話が入っていた。再生ボタンを押すと嬉しいメッセージが。「君の情報でタイの川を下ってきたよ」と。
野田さんからのメッセージだった。すぐ折り返し電話して、実際に行ったタイの話を聞かせてもらった。ピン川のチャンマイより上流部を下ったらしかった。

しばらくして、なんの前触れもなく(笑)送りつけられてきた一冊の本がこの本だ。痺れた、僕がやりたかっとことがそのまま優しい歌のように書かれていた。
野田さんがタイの川を藤門さんと下るらしい、jogo、野田さんに会いにいけ。東京ファルトボートクラブの先輩の計らいで、会食会に呼んでもらった。そしていきなり聞かれたのは、「君、地図はどうした(どうやって手に入れた)?」、そして次は「君、魚は釣れるか」だった。

引越し魔だった僕は、この本を最も世に残す方法は図書館に寄贈することだと考え、そうした。そして、この本は今でも残っている。この本の魂はいつまでも残り、そして世界の川を旅し続けるだろう。
野田さんの魚を胸の前で掲げる写真が大好きだった。初めてそれをみた高校生の時、身体に電撃が走った。カヌーをはじめ、野田さんに会った後から釣りを始めた。最初は下手くそでなかなか魚が釣れなかったけど、やっとまあまあ釣れる腕がついてきた。今度野田さんに会ったら、釣りの話をしたいな。その日まで、僕は釣り続ける。とこまでも、いつまでも。
生きているとか、死んでいるとかそんなことはどうでもいい。要はこっちにいるかあっちにいるかの違いなんだから。
道場六三郎