■■■■■■■■■■■■人生百歳時代■■■■■■■■■■■■
■■大変革の時代■■
●30年続いた平成は、あと3ヶ月で終わる。そしてポスト平成が始まる。
先日の深夜、NHKラジオ深夜便「千夜一夜」で、作家、五木寛之さんの
対談「人生百歳時代をどう生きる」を聞いた。
●その要旨はーーーー
・人は必ず老いていく。国も同じように老いていく。
・高齢者は、合唱団のなかの一人的な存在なので、孤独な立場である。
しかし,それは決して孤立ではない。
・孤独は人間として当然の事だが、孤立する事は決してよくない。
・本来,人はどこまでも一人であって、Together & Alone である。
(作家、五木寛之さん)
●そしていま、
・好むと好まざるに拘わらず「百歳人生」の幕開けの時代に足を踏み入れ
ようとしている。
・いつの間にか、とんでもない長寿社会が来てしまったと言うのが実感だ。
・長生きする事は,それほど嬉しくもないし「百歳人生」なにが目出度いの
と思う人も、多いのではないか。
・加えて世界人口は、100億人という未曽有知の時代を迎えようとしている。
・未だない「2つの100」という大変革の時代を迎えて、私どもはこれから
「どう生きるか」。そして「どう逝くか」が、いま改めて問われていると思う。
かく言う私は、大変革時代の到来で、現実社会がどう変容してゆくのか、
その新たな変化に対して、老いた胸をときめかしている。」
何とも、86歳とは思えない迫力に満ちた話だった。
■■高齢化の実情■■
●日本の高齢化がすざましい。高齢化とは老化する事をいう。
老化とは、活力をなくすことだ。作家の五木さんが言うように、人が老いると
ともに、国も老いていく。
因みに、日本の高齢化の実情はどうかーーーーー
●「日本の人口と高齢化の統計」平成28年)
(項目) (人口・万人) (構成比)%
・総人口 12,695万人 100、0
・高齢者人口 3,461 27,3 (65歳以上、4人に1人が高齢者)
・70歳以上人口 2,437 19,2
・75歳以上人口 1、697 13,4
・80歳以上人口 1,045 8,2
・生産年齢人口 7、708 60,6
・年少人口 1,611 12,7 (0~14歳)
(出所;総務省、人口統計2017)
●「日本の年金の実情」2017年
(項目) (対象人口) (内訳) (備考)
・保険納付人口 6,713万人 納付収入約37,6兆円 (現役世代が払う保険料)
・年金給付人口 3,591万人 年金給付約53,4兆円
・不足額 15,8兆円
(差額の不足額は、年金基金と、毎年の政府予算で充当)
●「公的年金、抑制の施策」
政府は、ますます募る高齢化、高齢者の増加、すなわち年金給付人口の
増加と、ますます減少する保険料納付世代をみこして、来年度に 2度目
の「マクロ経済スライド」を行う。そして世代間の公平性を高めるために一段
の年金改革を行うという。
併せて人生100時代を迎え、現行65歳受給を70歳に繰り下げる施策も
検討するという。
●「年金世界ランキング、日本29位」
最近、世界の年金制度に対して米国の民間企業マーサーが、世界ランキ
ングを発表した。意外や意外、日本は世界第29位だった。
日本は、世界有数の多人口国家ながら、世界に先駆けて社会保障の国民
皆保険制度を採用、その運用を図ってきたので、ゆうにベストランクに入ると
思っていた。大誤算である。
日本が遅れをとった理由としては、「持続性の危惧」(年金持続性への評価)
と、「支給開始年齢の引き上げ」が、取りざたされている。
特に国の借金、平均寿命、支給開始年齢などを評価する「持続性」に対して
極めて低い評価が集まったという。残念でならない。
「屈辱の年金、世界ランキング」
(順位) (国名) (評価)
1位 オランダ A
2位 デンマーク A
3位 フィンランド B
4位 豪州 B
5位 スウエーデン B
6位 ノールウエー B
7位 シンガポール B
8位 チリ B
9位 ニュージーランド B
10位 カナダ B
(中略)
29位 日本 D ●
(出所:米国マーサー調査2018)
●「単身高齢者が急増中」
単身高齢者世帯が、急激に増えつつある。俗に、おひとり様高齢者世帯は、
全国ベースで約12%。一方、大都会では、生活の利便を求める単身高齢者
の移住が急増しており、それに伴う医療や介護、生活保護の支出(社会保障)
が急増している。それらが地方財政を圧迫する懸念が出てきたため、新たな
高齢者問題に発展しそうな気配である
(出所:日本SPセンター)
●「認知症のリスク」
高齢者の認知症が、大きな社会問題になりつつある。 2025年には、認知症
患者が700万人規模になるという予測がある。 まさに国民病と言っていい。
厚生労働省の調査によると、去る2012年の統計でも462万人、6人に1人と
いう事になる。
これに伴う社会的コストは、約14,5兆円と推計される。
内訳は、医療費よりも介護費用が12,6兆円と、リスクは、はるかに大きい。
併せて、介護離職、成年後見制度など、難しい問題が山積する。
●日本の高齢化の現況を見てくると、リスクばかりか、反面、高齢者の堅実な
消費が、当面の日本経済に大きく寄与している事がわかる。
60歳以上の高齢者消費は、専門調査では、毎年伸び続けているという。
2014年のシニア消費では、115兆円と試算され、個人消費の48%を占めた。
高齢者人口が毎年増加するおりから、今後もシニア消費は、ますます増え続
けるとみる専門家は多い。
(出所:日本SPセンター)
●しかし一方、厚労省の国民生活基礎調査によると、日本は母と子のひとり
親世帯の半数以上が、貧困に苦しんでいるという。
直近の調査では、日本の最近の貧困率は、15,6%というデータもある。
●また団塊の世代を分水嶺として、65歳以上の高齢者世帯の生活が年々苦
しくなりつつあるという。
高齢者の生活保護世帯が、約80万世帯にまで増えているのも見逃せない。
最近では「下流老人」とか「老後破産」などの 厳しい言葉をよく見かけるが、
高齢者社会での経済格差が、静かに広がりつつある事は、確かなようだ。
●「高齢者貧困率の高い国」(OECD)2016
(順位) (国名) (貧困率)
・1位 韓国 49,6%
・2位 豪州 35,5
・3位 米国 21,5
・4位 日本 19,4 ●
・5位 トルコ 18,4
■■どう生きるか■■
●冒頭の作家 五木寛之さんの話は「大変革の時代をどう生きるか」 そして
その核心は、「百歳人生」と「世界100億人口」という「2つの100」だった。
中でも、高齢者にとって当面最大の命題は、好むと好まざるに関わらず到来
する「人生百年時代」を、どう生きるか、どう生き抜くかという事ではないか。
●そのための方策として、五木さんから「高齢者の3K」が問題提起された。
3つのKとは、高齢者が「人生百歳人生」を生き抜くための思考と行動の領域
を示したものだ。
高齢者の重要「3つのK」とは、ーーーーー
・「孤独」
・「経済(お金)」
・「健康」
●ふりかえれば平成の30年間、日本人の寿命は伸び続けて来た。
医療や治療法の進歩で、不治とされた病も、十分な延命治療が可能となり、
高齢者の死亡率が改善し、平均寿命の延びに寄与することになった。
寿命は天命、神のみぞ知るという見方もあるが、健康と表裏一体だけに個人
のケアーで、健康寿命を創りだす事が可能になってきた。
●「主な年齢の現在の平均余命」(単位:年、出典:厚労省)
(現在の年齢 )
(男性)/(女性)
・ 0歳 80.50/86.83
・ 5歳 75.74/82.07
・10歳 70.77/77.09
・15歳 65.81/72.12
・20歳 60.90/67.16
・25歳 56.05/62.23
・30歳 51.21/57.32
・35歳 46.38/52.42
・40歳 41.57/47.55
・45歳 36.82/42.72
・50歳 32.18/37.96
・55歳 27.68/33.28
・60歳 23.36/28.68
・65歳 19.29/24.18
・70歳 15.49/19.81
・75歳 11.94/15.60
・80歳 08.79/11.71
・85歳 06.24/08.35 ●
・90歳 04.53/ 0.66
(出所;厚生労働省2017)
●「日本万博テーマは未病社会」
来る2025年には、「日本、関西万国博」が、大阪で開催される事が決まった。
テーマは「いのち輝く未病社会のデザイン」 である。
未病社会とは、病気のない社会の事、ますます高齢化が進み、人生150歳の
声も聞こえてくる。
よれよれの老人が、息ながらえて益々孤独に生きるなど、あまりいいイメージで
はないが、既に現実社会では、新医療や産業の創出によって、未病社会を目
指して動きだした。
百歳時代をどう生きるか、なにかと悩める高齢者にとって、今更「未病社会」を
目指すといわれても、人生の終焉さえ不確かななかで、二律背反的で不条理
に映るが、富を生み出していく経済社会のわだちには勝てそうにない。
●まずは、寿命は天命なぞといわず、自身の「百年人生」を想定して前向きに
取り組む事が、幸せをもたらす事になると思う。
作家の五木さんは、「百歳人生」という、とんでもない未曽有の大変革時代を
歩み始めたと言う事を、私どもが、まず覚悟する事が大切だという。
●古代インドでは、人生を四つに区分して、それぞれの時期の生き方の知恵
について教えてくれる。
(1)学生期 ( 0歳~25歳) ・誕生して生きる知恵を持つ学びの時期
(2)家住期 (25歳~50歳) ・社会人として家庭を作り、仕事に励む時期
(3)林住期 (50歳~75歳) ・仕事や家庭から卒業し、行く末を瞑想する時期
(4)遊行期 (75歳~100歳) ・林から出て遊行し、人に道を説き耳を傾ける時期
●また中国の陰陽五行説では、
(1)「学生期」を 「青春」
(2)「家住期」を 「朱夏」
(3)「林住期」を 「白秋」 〇
(4)「遊行期」を 「玄冬」 ●
人生を、四つの季節に分けて考えるよう 説いている。
■■玄冬シニアの賢い選択■■
●日本の高齢者は、「林住期」の後半から「遊行期」(玄冬)にいるとみていい。
一見厳しく見えるが、本来、高齢者は、孤独な世界にで現存する。
群れに頼ることなく、一人で生きる事が、自らの歩みを確かなものにするように
思えてならない。
高齢者の「孤独」の要諦に、「3欠く」を進める識者も多い。
・「義理を欠く、欲を欠く、恥をかく、その3つを欠く見栄を厭わない事」
・「嫌われる勇気を持つ事]
定年でとっくに組織を離れ、本質的には一人なのに、孤独の恐れからか、その
意識はなく、一人立ちしていない高齢者が多い。
そして、孤独の恐怖をいつまでもひこずる心弱いシニアが多過ぎる。
齢を加えるという事は、何かを減らしてゆく事でもある。浮世のしがらみに拘わら
ず自由気ままに生きてゆく。無理をすると、思わぬ迷惑を周りに及ぼす事になる。
「3欠く」は、まさしく高齢者の礼儀という所以だ。
●高齢者の世界にいち早く溶け込み、高齢者の特権である「孤独」を謳歌する。
それが未曾有の大変革時代に生きる 玄冬シニアのあり方だと思う。