【9月5日投稿分】
読者高校生男子が「住職ね、僕の両親ですが、胡散臭い僧侶に『あなたが苦しいのは、先祖の祟り』と脅され、そこに行く度に高額供養料、祈願料を。何度お祓いに行っても、全く進展がないのに『おかしい』と気付かない親の方もどうかしてるよ。だいたい僕の親は、何でもが人に責任を転嫁する人達で『俺がこうなったは、あいつのせい、こいつのせい』と。いやいや、あなた達のせいだよ。原因が自分達にあると、本当はわかってるくせに、認めないんだよな。何かのせいにすれば、その場だけは楽になるからね。だけど、何の解決にもならないよ。先祖のせいなんかじゃないよ、自分達の生活態度に問題があるんだよ」と。
続けて、この高校生が「お笑いの竹山さんがラジオで『人間が地球に現れて数万年に。悪人が悪霊になったと仮定しても、とんでもない数になってるはず。そう考えると、この世に出てくる悪霊の数が、少な過ぎだろ』とキレてた。この見解ですが、非常に納得なんだけど、住職、そう思わん」「だよね。拝み屋さんの数しか、出てきてないもんな。拙僧の周囲には、悪霊さんだが、未だ嘗て、1度も出てきた事がないんだよな」と。
更に、拙僧「悪霊を信じてる人達なら当然、閻魔も地獄も信じてるはずだよね。悪霊になる様な人(故人)なら当然、その地獄とやらで閻魔と接見し、怒られてるはずだわな。その人(悪霊さん)がまた、性懲りも無く人間界に足を運んで悪さしてるを、閻魔は『おう、おう、やれ、やれ』と、見て見ぬ振りして好き勝手にさせてるのかな。もしそうなら、閻魔の存在価値なんてないやん。という事はくさ、悪霊さんなんていない、という事だよ。『あなたの先祖が、あなた達(子孫)を祟っとる』と拝み屋さんに言われ、それを信じるという事は、先祖に祟られる様な事を、何かしでかしたから、身に覚えがあるから、信じるのかな。何が哀しゅうして、我が子孫を祟る様な先祖がおろうかいや。先祖を愚弄するも大概にせにゃ。あの世でご先祖達が『私がいったい何をしたというんだ』と頭抱えてまっせ」と。
対し、読者高校生が「だよね。失礼だよね」と。返して、拙僧「中には『自分の先祖ではない悪霊が、襲ってくる事もあるんじゃないか』と返してくる拝み屋さんもいそうだが。昨今は人間の世界でも『誰でもいいから、やっちまえ』が、ちらほらと出てきてはいるが、その昨今でも、襲う理由は『遺恨(うらみ)』が根本にて、自分と何の関係もない人間を襲うは、滅多にはない事。悪霊が本当にいたとしたら、の話だが、その世界でもそうじゃないのかな。全く縁もゆかりもない人を、悪霊さんが祟る理由がないわな」と。
続けて、この高校生に拙僧「だけどさ、ここのところ、昔と比べて随分と夏の風物詩である、幽霊関連のテレビ番組が減ってきたよね。日本人も大概気付いてきたのかもしれないね、先祖を愚弄する様な事は、失礼な事であるという事が。それか、その手の番組に飽きてきたか、だね。テレビ局側も、視聴率の取れない番組は、作らないもんな。今年の4月、第210回の国会で罰則(懲役、罰金)を含む法律『不当寄附勧誘防止法』が成立し、施行される事に。『悪霊、先祖が祟っとる。除いて欲しくば、金を出せ』を出来なくさせる為に。やっと、やっと、信仰界にメスが入ったよね。この手の相談だが、今日までに拙僧、どれ程に受けてきただろうか。この法律で少しは、被害に遭う人が減るかもしれないね。今から1100年前、室町時代に一休宗純さんが『欲を捨てよ、という側から、拾うてまわる寺の坊主』と言ったとか、言わなかったとか。まあ、でも、一休さんなら言いそうだけど。その時代から坊主は、そうだったんだろうね。石川五右衛門さんの『浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ』も同じ意味合いかな」と、この高校生に。
さて、次の様な話(相談)も年に1、2回、拙僧のところへやって来ます。先日も、ある拝み屋さんから「この家は不動明王を祀っておろうが。その為に家の中に入れんと、お前の先祖達が玄関先で怒り狂っとるぞ」と言われ、高額お祓い料を支払い続けている、という婆様が拙僧の寺へ相談に来られました。その婆様に「拙僧のお寺に来る時、その怒り狂ってる先祖達が、待ち構えている玄関を出てきた訳ですが、何かされたね、その先祖達に」「いや、何もされなかった」「そうね。じゃ、この話は終わりだね」と。
【余談】
これは、今年の8月下旬の話です。拙僧の知人が「住職、仕事で福井に行くなら、東尋坊には寄るの」と。「寄れたらいいね」「自殺の名所なんでしょ。霊に祟られるんじゃないですか」と。「あのね、何で、いつも、いつも、そういう発想になるかな。悲しく亡くなって逝かれた人に、更に、追い打ちを掛ける様な、心無い言葉を投げ掛けるは、失礼にも化け物扱いするは、やめや、と言ってるでしょ。福岡世界水泳で27Mのハイダイビング競技があったが、日本の参加選手はただ1人で、日本人では初参加だったらしいよ。その参加選手が練習場所がなくて、東尋坊で高飛び込みの練習を。もし、霊がそこにいたとしてもくさ、応援してくれてるよ」と。対し、この知人が「自殺された人達が、応援するんですか」と。「あのね、霊がそこにいたと仮定の話だよ。辛い思いして命を絶たれた人達が『自分と同じ目に合わせてやる』なんて考えるもんか、目の前で懸命に頑張ってる人に対して。『怪我をしない様に』と、見守ってくれてるくさ。それと、様々方々から文句が出てきそうだから、付け加えておくが、東尋坊を練習場所として選ばれたも、国内に27m(ビル9階相当、着水時速87キロ)の飛び込み台と、それを受け止められる水深のプールがない、が理由だったとの事らしいよ。それに、当然、許可も取られてるくさ、自殺名所の東尋坊だよ」と。因みに、荒田恭平さん(当年27歳)の福岡世界大会の成績は、20位だったそうです。日本人初の挑戦だから、ご本人もこれからですね。
因みに、2004年4月から、東尋坊での自殺防止のパトロールを目的に、有志団体(元警察官など)が NPO 法人(詳細はググって下さい)を立ち上げたとの事。初期の10年間の平均自殺者数は、年に約25人だったそうですが、現在は、半分以下の10人程度にまで減少してきたとの事。事前に自殺防止が出来たは、18年間で745人と。この話(東尋坊関連)は、X(元Twitter)のみに投稿した法話ですが、当人の荒田恭平さんから、投稿後即「取り上げて頂いて有難うございます。東尋坊の印象も変えられるかな、と思って」と、ご丁寧な返信メールを頂き、びっくり致しました。偶然でしょうが、読まれたんでしょうね。『東尋坊は、飛び込みの練習が出来る場所ですよ』と世間に知れ渡ったら、随分と印象(自殺の名所)が変わるは、確かでしょうね。
【追伸】
読者が「住職は、脅し信仰に関する相談は、どの系統が多いですか」と。対し、拙僧「ポピュラーなのは、やはり『信仰を止めたら、何年以内に死ぬぞ、病気になるぞ』の脅しかな。人間の死亡率は、100%なんだよな。拡大解釈すれば、そりゃ、いつかは当たるわな。が、釈尊も達磨も各祖師も、脅して導いたなんて話、聞いた事ないよね」と。
次回の投稿法話は、9月10日になります。