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バイオ燃料の課題

2007-08-11 03:22:36 | 環境問題
 京都議定書での日本の地球温暖化物質削減目標【-6%】は、実現の見通しが暗いという報告が出たというニュースが8月10日に流れた。
 日本の京都で世界の代表が激しい論議をして決めた目標を、開催国が実現できないと言う、恥ずかしい話。

 地球温暖化物質の提言のための「切り札」とされている、『再生可能エネルギー』

 その最も理想的な姿は、全てのエネルギーの源泉である『太陽光』のエネルギーを活用することだ。
『太陽光発電』『太陽熱による給湯・冷暖房』などが代表だ。

 しかし、今の所ソーラーカー・レースは別にして、太陽のエネルギーで実用の自動車を走らせることはできない。

 そこで、注目されているのが、『カーボン・ニュートラル』(地球上のCO2を増減させない)とされている、バイオ燃料である。

 バイオ燃料には、ガソリン代替燃料である、バイオ・エタノール(アルコール)【BEF】と軽油代替燃料である、バイオ・ディーゼル【BDF】がある。

 【BEF】は、言わば醸造業であり、お酒を造るプラントを大規模に工業化したようなものであるから、お酒を造る原料はそのまま活用できる。すなわち殆どの穀物が原料になりうる。 これらの穀物は、主食でもある訳で、人間ではなく自動車さまの“食糧”となってしまうことで、問題が起き始めている。
 すなわち、南米などで作付け転換が大規模に起こり、オレンジが切り倒されて燃料用作物に転換され、オレンジの供給が大きく落ち込んだなど、農作物の価格高騰を誘発している。
 また、飢餓に苦しむ人々が地球上で10人に一人と言われているのに、作物を自動車に食べさせて良いのか?という議論になり始めた。

 【BDF】では、東南アジアのパーム椰子が有力な原料であるようだ。
元々パーム椰子からは、食用の油を太古より採取し活用してきたらしいが、ここに来てBDF用に大きく転換されているという。食用油と比べて自動車が飲み干す油は桁が違うから、需給逼迫を起こし、大規模な作付け面積の拡大と、プラントの建設が進んでいる。
 その作付け面積拡大の手法は、熱帯雨林などの既存の自然林を焼き払い(言わば原始的な『焼畑農法』)パーム椰子を植えているという。
 このため、肥沃だった熱帯雨林の「地表流出」を引き起こし、また熱帯雨林のCO2吸収能力が無くなって、却ってCO2削減を阻害することになる。
 パーム椰子と言うから椰子の木であり、熱帯雨林の植生と比べれば、葉は圧倒的に少なくて、単位面積当たりのCO2吸収能力は比べ物にならないと言う。

 CO2削減の切り札とされてきたバイオ燃料を造るために、CO2吸収の決めてである自然林をなくして却ってCO2を増やすと言う悪循環に陥り始めた。

 日本では、『菜の花プロジェクト』と称して、使用済みてんぷら油を回収してBDFにする運動が進んでいる。これは、日常に使用されているてんぷら油を使った後にBDFにするものであるから環境負荷は小さくて優れたものである。
 しかし、この再生油では、日本で走る自動車の数%も動かせない。圧倒的に量が不足している。現在の技術では100%再生BDFでもディーゼル車を動かせるが、実用的に推奨されているのは、軽油に5%~20%混入して使用する方法である。しかし、混入した場合でも、全量に対して軽油取引税が課税されるので、問題となっている。
 
 そして、バイオ燃料に共通している問題は、これらの燃料を造るプラントで大量のエネルギーが消費されることである。それを化石燃料由来のエネルギーで賄っていれば、なんのためのバイオ燃料なんだ? ということになる。

 自動車が出す見掛けの(換算した)CO2は確かに減るが、その燃料を造るためにCO2を増やしていないか?

 現状で広くひろがり始めた認識は、トータルで(地球全体で)考えて、バイオ燃料はCO2削減に効果があるのか?という疑問である。

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