「朝日」16日付は、「邦人救出 想定に穴」「自国の責任が原則 米軍頼れず」と解説記事を掲載しています。 以下、ポイントを紹介します。
「米軍の準機関紙『星条旗新聞』は2012年5月、朝鮮半島有事の際に米軍が韓国在住の米国民ら約20万人の避難計画を準備していると、報じた。 20万人を避難させる必要がある米軍に3万人の日本人を救う余裕はあるのか、元自衛隊幹部は指摘する」
「1997年~98年の日米交渉で米側が日本に伝えた、『米軍による救出・保護作戦での国籍による優先順位』(当時の政府関係者の証言)
1、米国籍を持つ人 2、米国の永住許可証の所有者 3、英国やカナダ国民ら 4、その他の外国人(日本人を含む)」
「日本の防衛を担当する防衛省・自衛隊からは、そもそも公海上での米軍支援という『点』を抜き出すような政府の想定に対し、疑問の声が上がる。 自衛隊は朝鮮半島で戦争が起きれば、①弾道ミサイルへの対応、②米軍への支援、 ③原発など重要施設の防護やテロ対処など本土防衛、④韓国からの日本人救出など輸送管理ーーについて対応部隊を一斉に動かすと想定。~防衛省関係者は『もし日本人を乗せた米艦が戦地から日本へ帰ってくるような事態が起きるなら、その時は日本も直接攻撃され、自衛隊が出動しているはずだ。 つまり集団的自衛権で米国を助けるどころか、日本が自国の防衛に対応を迫られている状況になっているだろう』と指摘する」
道下徳成・政策研究大学院大教授(安全保障論)のコメントが掲載されています。
「政府や与党も極端なシナリオばかり出し、現実に沿った議論ができていない。 日本が集団的自衛権を行使するなら、その本来の意義は、多国間での安全保障協力で、アジア全体での平時の抑止力強化につなげることにあるはずだ。 米軍への支援や有事のシナリオばかりが注目されがちだが、多国間で議論や情報交換を重ね、場合によっては軍事演習などにも参加することも考えるべきだ」
「東西冷戦が終わり、世界の多極化が進むなかで日本の安全保障を考えるには、平時やグレーゾーン事態(準有事)が有事に進展しないよう、リスクを管理し、抑え込んでいくことが重要だ」
道下教授の指摘は、日本共産党の「北東アジア平和協力構想」=「平和的安全保障」の考え方とも共通するところがあるように思います。
同紙は、海部俊樹元首相、与謝野馨元官房長官、加藤紘一元官房長官3氏の発言を掲載しています。 加藤氏の発言を紹介します。
「戦後日本の平和を守ったのは、田舎の保守系無所属の人たちだ。 惨めな戦場を経験し、戦後は黙々と地域に尽くし、この国を食えるようにした。 世代交代で今、戦争を知らない政治家が国民をあおっている。 僕の田舎の後援会事務長は16歳で少年兵になった。 朝飯を一緒に食べた同期の仲間が隣で頭を撃ち抜かれて死んだ。 いずれ自分も死ぬ。 その前に恋がしたい。 それで慰安所に行った。 むしろの仕切りの中に入ったら、朝鮮の女性がいたそうだ。 『申し訳なかった』。 戦後、心の中で女性に謝り続けていたんだ」
「僕は体験者から直接話を聞いた人間として発言し続ける。 政府が与党に示した集団的自衛権などの15事例なんて、官僚の小細工だ。 防衛庁長官や官房長官を経験したが、集団的自衛権を使えず、日本の安全が保てなかったという経験はない。 米軍に紛争地から日本人を連れて帰ってもらおう、という話もなかった」
「尖閣諸島はヤギのすむ岩山。 『安保がある』というけれど、尖閣を守るために、なぜ米国の若者が死ななきゃいけないのか。 オバマ大統領が命じますか。 外交は机上の空論じゃない。 自分たちの家族の命をかけることとして考えるべきなんだ。 中国の脅威というが、中国の観光客は増えている。 もっと民間交流を進めよう。 日中とも外務官僚が仕切り、妥協の発想がない。 日本を取り戻すというが、取り戻す日本とは何ですか」