自民・公明両党は10日、消費税を10%に引き上げる際の消費税率据え置き制度の取り扱いを除いて、法人実行税率を引き下げることなどを盛り込んだ2016年度「税制改正大綱」を了承しました。
この間、メディアは連日、大々的に「軽減税率」の報道を競い合っています。 何か、増税ではなく、”減税の恩恵”を国民が受けられるような錯覚させ起こさせられる事態が、意図的につくり出されているように感じます。
元静岡大学教授・税理士の湖東 京至さんの解説記事を「全国商工新聞」(12月14日付)で読みました。 以下、湖東氏の「解説」の1部を紹介します。
【価格が下がる保証なし】
「軽減税率をめぐって肝心なことは、消費者にとって軽減税率対象品目がどのように線引きされようと、物価は全く下がらず、消費税は公平な税制にならないということです。 『せめて飲食料品は軽減税率にしてほしい』という消費者の切実な声を聞きますが、軽減税率の適用となった物の値段が下がる保証はありません」
「例えばペットボトルを見てみましょう。 中の水は8%でもボトルやラベルの印刷費、自販機や電気代、運送費は10%に上がりますから、キリンやアサヒ、コカ・コーラなどのペットボトル飲料販売業者はその分の値上げをしかねません。 価格を決めるのは企業ですから、便乗値上げも可能なのです。 消費税法はそれを禁止していません」
「野菜や魚など、生鮮食料品の価格は需要と供給の関係で決まります。 天候にも左右されます。 軽減税率が適用されたからといって安くなる保証はありません」
【大企業ほど負担軽く】
「軽減税率によって得をするのは消費者ではなく、軽減税率適用物品を販売する企業です。 政府は飲食料品(加工食品を含む)の軽減税率を採用すると、1%で6600億円の税収が減ると試算しています。 2%なら1兆3200億円です。 消費税を税務署に納めるのは事業者(企業)ですから、軽減税率適用物品を販売する事業者の納税額が1兆3200億円減るわけです」
「これらの製品を大量に販売できるデパートや量販店ほど納税額が減るのです。 ですから、軽減税率は価格決定権を持つ、力の強い企業に対する実質的な補助金になるのです」
「じんぶん赤旗」12月5日付は、試算結果を示し、「どこが『軽減税率』?」の記事を掲載しています。
同紙の試算によれば、据え置き(8%)の場合、1世帯(2人以上)平均で2%による年間負担増は5万7900円となります。 生鮮食品への支出は年間26万6000円なので、負担増は5300円程度となります。 生鮮食品への税率据え置きが実施されたとしても、5万7900円との差額5万2600円が負担増となります。 公明党が主張してる加工食品を対象に加えても4万6400円の負担増です」
同紙11日「主張」は、「国民や中小企業を犠牲にする消費税増税も大企業減税もやめ、社会保障に必要な財源は消費税に頼らず確保する、税制・財政の抜本的な見直しが不可欠です」と訴えています。