きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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花輪       田添明美

2021年08月28日 11時09分03秒 | 「いたずら」田添明美

奇妙な「どうつぶ」に、風吹く草原で出会った
「どうつぶ」は 話すたびに
消えるようなしけた火を 吐いた

「どうつぶ」のしっぽの突起に 触りながら
会話が途切れると、二人で睡った
目を覚ますと
「行かなければ、ならない」というので

そこらじゅうの 花を集め
こぼれる程の、花輪をつくり
「どうつぶ」をしゃがませ
いくつもいくつも、首に花輪をかけた

(わたしが大人になったら、
 もう会えない?)と聞くと
頷いた

夕日がかゞやいて
その中を
たくさんの花輪で飾られた
「どうつぶ」は、ゆっくりゆっくり
腰としっぽを 振りながら
崖の上の岩穴、
もうわたしには届かない、
「どうつぶ」だけの、世界へと戻っていった

「どうつぶ」が 歩いていった先に
花が、つゞいて こぼれていた

その時、
年月が経ち
年月が経ち
わたしが忘れても、
「どうつぶ」が、わたしを覚えていてほしい
と、
願った


                   R3.6.12